星の瞬き | ナノ

  赤い瞳、鮫、暁A


スローモーションのように崩れ落ちていくサスケの体。それをしっかりとイタチは受け止めた。


「何見せたんだよ」

「まだ…サスケに知られるわけにはいかない。あの事件を思い出せばオレを追うのも踏み止まるだろう」


どうしてもあの真相を知られたくない、ってことか。確かに真実は残酷ではあるが。こいつらは昔っから不器用な兄弟だ。


「はぁ…ったく、手のかかる弟達だな。おい、そこの鮫。とっととイタチを連れて兄さんの元に帰れ。カカシ先生とサスケの処置と後処理はオレがしてやる」

「鮫って…」


彼は何か言いたげではあったが、睨みつければ押し黙った。これ以上の面倒事は御免だ。


「頼むから長門兄さんの邪魔だけはしないでくれよ。ほら行った行った」


イタチからサスケを受け取りしっしと追い払うように手を振る。イタチは名残惜しそうではあったが大人しくサスケと別れる。


「お前ら、何しとる!」


突然した大声に振り返ると、そこにはあの色っぽいお姉さんに着いて行ったはずの自来也がいた。背中にはぐったりとしたそのお姉さんが。


「お前らワシの事を知らな過ぎるのォ……。男自来也、女の誘いに乗るよりゃあ、口説き落とすがめっぽう得意、ってな!」


オレとの会話に邪魔が入らないようにするために、お姉さんに幻術をかけてオレと自来也を引き離した。大体そんな感じか。…勘違い要素増えてるよ!もう駄目だわ、イタチ何気に天然馬鹿だったわ…

決めポーズを決めてこちらを見るやる気満々の自来也。ヤバい…この状況はヤバいぞ…いくらなんでも三忍の自来也だ。相手にするには危険が大きすぎる。


「オラ!お前らとっとと行け!」


先ほどから突っ立っているだけの二人の背中を蹴り飛ばして、自来也から死角となる廊下へと向かわせる。自来也はオレがとった行動に唖然としていた。「兄さんによろしくー!」と、ぶんぶんと手を振る。


「お、おいナルセ!なぜ逃がしたんじャ!」


自来也は厳しい顔でオレに尋ねる。オレはそちらに顔を向けず、少年を見やる。


「別にあの二人はオレを攫いに来たわけじゃない。単に用事があっただけだ。暁のメンバーが犯罪者が多いというだけで犯罪組織と決めつけるのは止めて頂きたい」


腕の中の額に汗を浮かべたサスケの前髪を分ける。眉間に皺を寄せて歯を食いしばっている。あの日を思い出すのはつらいだろうな。


自来也はまだ何か言いたげではあったが、オレの行動を見てそれ以上追究しようとはしなかった。

するとまた突然ドゴォといった轟音が響き渡る。煙が湧きあがり、その中には人影が。クナイが脇をすり抜けた。


「ダイナミック・エントリー!」


緑一色の全身タイツを着た熱くて濃い男…ガイ先生だった。自来也の鼻っ柱に直撃!見れば壁には大きな穴が。修理費ェ…


*****


自来也の鼻に鼻血止めのこよりを詰め、ガイ先生の話を聞く。

何でもイタチの写輪眼対策として視線を警戒していたのだが、鏡を忘れてしまい額当てを代用するとこれまた見えづらく。自来也を敵と勘違い、と。


「その厳ついお顔がつい敵かと思い、燃えてくる青春のほどに身を任せついあっ!すいません!」

「お前!それで謝っとるつもりか!」


おそらく彼なりに謝っているつもりなのでしょうな。


「とにかくサスケを医療班の元へ」


二人の視線がオレの腕の中のサスケに集まる。外的な傷は一つとしてないのだが、サスケの意識はない。


「ちょっと事情があって…な。いつ目を覚ますのかオレにもわからない」


ガイ先生の話によるとカカシ先生もイタチの幻術を受けたと。ああ、そういえばイタチが月読を使ったと言っていたな。

オレはまだ精神的な傷で意識を失った場合、それを癒す術を持っていない。とにかくオレでは無理だ。


「三忍自来也様、五代目火影候補は一体誰ですか?」

「……。オレと同じ三忍の病払いの蛞蝓使い、背中に“賭”を背負った綱手姫じゃ」


落着きを持ち、真面目な口調で問うたオレに自来也もまた冷静さを取り戻して答える。


「綱手姫…あの三忍の。大体想像はついていたが」


ついでに綱手は医療のスペシャリストだ。二人の治療を任せられるのはあの人しかいない。オレの言葉に自来也もガイ先生も重々しく頷く。


サスケをこの状態のまま放っておくことはしたくない。イタチの幻術の効果が切れれば目を覚ますのか、それともサスケの意思によって目を覚ますのか。

いずれにせよこのままにしておくことに賛同しかねない。カカシ先生も床に就いていることだろうしな。


「自来也様。綱手様をきっと…探して連れて来て下さい」


ガイ先生は思いつめた顔で自来也に懇願する。


「オッケー。任せろって!」


ガイ先生の決めポーズをお借りして力強く返事する。ガイ先生も自来也も呆気にとられていたが、すぐににっこりと笑った。うむ、それでよろしい。


意識を失ったサスケはガイ先生に頼み込んで木ノ病院に運んでもらうことにした。


その後、あの全身タイツを勧められたが、全身全霊を持って拒否させて頂かせた。今回ばかりはうざったい変質者と同じダサイという意見を持たせてもらう。



勘違い、ダメ絶対
(後処理をするこちらの身にもなれ)


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