星の瞬き | ナノ

  九尾との邂逅


鼻につく鉄の錆びた臭い。
体にまとわりつく赤い水。
目の前には「封」と書かれた札が貼り付けられた鉄の檻。
その向こうには禍々しいオーラを放つ九つの尾を持った狐。




――ここがまさか…









「精神世界というやつですか!!」
「うるさいぞ、小娘」


器用に尾を動かし足元の水をぶっかけられる。


「ぶフぉ!ちょ、何すんだよ!!」


水をぶっかけた張本人に抗議すればツーンとしてこちらを見ようともしない。

キーッ!むかつく野郎だ、コノヤロー!!


「おい小娘」

「あ゛?何だよ」


九尾はちらりと目線だけ向けて問う。



「ワシは確か火影の赤子に封印されたはずじゃ。お前は誰だ」



は?何言ってんだお前

呆れたような目をすればギロリと鋭く睨まれた。こ、こっえー!!


「何言ってんのかわかんないけど、あんたは確かに私に封印されてるよ。ここは私の精神世界なんだろ?」


私がそう言えばそれもそうなんだが…とうなる九尾。


「ワシの記憶違いじゃなければ、お前今三つほどだろ?」

「そうだけど…」


前回の誕生日会は人の集まりが悪かったなあ…。あの狗のお面を着けた人には来てほしかったんだけどなあ…

と、いけないいけない。思考が飛んでいたようだ。


それが何か?と問えば自分の姿をよく見ろと言われたので、水面に映った自分を見てみる。


映っているのは明らかに三歳児のものではないその身長。輝く金髪ではなく光沢のある黒髪。


お、おお!昔の私じゃないか!懐かしいな、私よ!


「まあ、そんなことはどうでもいい」
「なっ!ちょおまッ!!」


折角人が再会の感動に浸っていたというのに。

私にとっては大事なことなんだぞ、ちくしょー。










「小娘、ワシをここから出せ」
「そりゃ無理」







やけに真剣な顔して聞くから何事かと思えば…

私にそんなこと出来るわけなかろうが。
四代目が施した封印だぞ。無理ゲー。

封印が弱まってる時ならともかく、今したら私が死んでしまうかもしれないだろうが。

あ、コラ!睨むんじゃない!
ただでさえ目付き悪いんだから


「チッ、馬鹿そうなガキだからいけると思ったのに…」


おい、聞こえてんぞコラ

誰だこのムカつく狐の教育したやつ
出てこい。しばき倒してやる


「ところで小娘。なぜお前は中身と外身の年齢が合っていない」
「よくぞ聞いてくれましたっ!」


そこから私は九尾になぜ私がここにいるかの経緯を説明した。

かいつまんで言えば、もうすでに一度死んじゃったー、とか。厨二ヤロウに個人の希望を聞き入れられず飛ばされたー、とか。


まああとは、この世界について知ってることとか厨二ヤロウをぶっ飛ばしたいなとか、蹴り飛ばしたいなとか、害無く暮らしたいなとか、厨二ヤロウを地獄に突き落としたいなとか、etc…


話し終えたころには九尾はげんなりしていた。なぜに。


「ま、なんだ。正直私はあんたをこのまま閉じ込めておこうとは思わない訳よ」

「…なぜだ」


それを聞いてクワッと目を開く。


「私のフラグが増え…


あっ、ちょごめんて!睨むな!水を飛ばすな!」


こいつ本当に素行悪いな。

あ、すみませんごめんなさい。
悪態ついて申し訳ありませんでした。

畜生。これじゃあ仕事でミスしたサラリーマンじゃないか。



まあお遊びはこのへんで。
ゴホンと咳払いをする。


「私もあんたもさ、ただ単に人間に兵器として利用されかけただけなんだよ。あ、今も現在進行形でそういう風に扱われてたな。

ま、ともかくだ。あんたは人間の身勝手な抗争に巻き込まれただけだ。こんな風に拘束されなくていいんだよ

陽のチャクラとか陰のチャクラとか関係無しに、あんたも生きてる。自然界にはプラスのものとマイナスのものが同時に存在する。それを他人がどうこうしていいもんじゃないんだよ。


それに『情けは人の為ならず』って言うだろ?」


そう言い終われば可笑しなやつだと呆れられてしまった。それでも構わない。これはただの持論だ。

ニシシと悪戯っ子のように笑う。


「あんたこと気に入ったよ。今日からあんたは私のペットだな」

「…ワシのことをペットだのと抜かしたやつはお前が初めてだ」


お互い数秒見つめ合って声を上げて笑い転げる。

いやー、最近暗部の人達が構ってくれなくてさ。三代目のじーさんくらいしか話し相手がいなくて寂しかったんだ。


ひときしり笑った後でひーひーと呼吸を整える。

ふと意識が遠退いた。


「目覚めるみたいだな」


九尾が目を細めて言う。

その瞳の奥には何を隠しているのだろうか。怒りか、憎悪か、妬みか、寂しさか。


「また会える?」

「ここに来ればいつでも会える」


九尾はニタリと笑った。あんたにはそっちのほうが似合ってるよ。

私も負けないくらいニタリと笑い返す。


「私はナルセ」

「…九喇嘛だ」



――また今度



意識がぼやける中、あいつの赤い瞳と金色が見えた気がした。


ペットが出来ました
(すごく……大きいです…)
(止めろ。その言い方には語弊がある)


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