森の中で拾ったのは
油断していた。
簡単な任務だと侮っていた。このオレがこんなおつかいのような任務に手こずってしまうなんて。
傍にあった木に寄り掛かり、そのままずるずると座り込む。
周りも木ばかり。鳥の鳴き声が、木々のざわめきが、風の音が耳に入る。
人の気配が全くといっていいほどしないので、ここは森のかなり奥のほうなのであろう。
少しだけここで休んでいこう。チャクラが回復するまで。回復してから、移動をしても特に支障はない。
そしてオレは意識を沈めた。
*****
五歳になったナルセは三代目のもとを離れ、一人暮らしを始めた。
正直たった五歳の子供に一人暮らしをさせるのはどうかと思うが、私は精神年齢だけでは十分に一人で生きていけるので、三代目からの申し出を受けることにした。
そこで三代目から条件を出された。
“十五になるまで男の格好をして生きること”
いずれ里の人間から疎まれる私は、きっと風当りが悪くなるだろう。
言葉の暴力。身体への暴力。精神への暴力。
それ以上に三代目が恐れたのは
性的暴力
尾獣の封印が一時的に弱まる時がある。それが出産の時期。
もし万が一私が妊娠してしまえば、九尾の封印が解かれてしまうかもしれない。五年前のあの日のように。
そう考えた上での条件だろう。
一方私…いやオレからも三代目に対して条件を出した。
“人が寄りつかない森の奥に家を建ててひっそりと暮らさせること”
オレだって家でゆっくりする時間が欲しい。その時間を邪魔されるようなことがあっては困る。
森の奥であれば、一般人はそう近寄らないし、雑音もない。慣れてみれば快適なものだ。
それに、三代目は一人暮らしと言ったが、実際は一人ではない。オレには九喇嘛がいる。だから話し相手に困るということもない。まあ、これは三代目は知らないことだが。
最近オレは九喇嘛に修行をつけてもらっている。
なんでも、
「ペットよりも飼い主が弱いんじゃあ笑い話にもほどがある」
とのことで。
もう半分やけくそで修行している。
残りのもう半分?
あいつに脅され…ゲフン!自分の身ぐらい自分で守れるようにするためだ。
まず、簡単な理論から習い、変化の術をマスターした。これで買い物で困ることはない。
そこからいくつか術を習った。
影分身の術をマスターした時は本当に嬉しかった。おかげで練習量が二倍にも三倍にもなったからだ。…その分疲れも二倍、三倍となるのだが。
最近はなかなか充実した日々を送れている。
これで何もないと幸いなの「だぁああ!」
ずべしゃ
不格好な効果音と共に地面とこんにちわ。
まったく何だってんだコノヤロー。人の機嫌が良い時に。
ぶつぶつと不満を上げつつ顔を上げれば、今度は強面のおっさんとこんにちわ。
「ぎゃ――――っす!!」
オレの叫び声で森の中の鳥たちが何事かと飛び逃げていく。申し訳ない。
しかしなんでこんなとこに人が。目は閉じられているから寝てんのか?
そーっと手を伸ばせばがしゃりと音を立ててその体が倒れる。
え!?ちょっと待ってよ!まだ何もしてないよ!!
思わずあたふたとしてしまう。
するとおっさんの体が割れて……割れて!?
な、なんなんだ一体!?
ビックリ人間ショーか何かか!?
おっさんの割れた体の中からは気を失った赤髪の少年が。
こ、こりゃあてえへんだ!
さっそくマイニューホームへ運ばなくては!!
*****
――カタン コトン
微かな物音で意識が浮上し、目を薄らと開ける。まだ比較的真新しいこの天井をオレは知らない。
勢いをつけて布団をはがし、体を起こす。
布団?一体誰が…
――カタン
音がした方へぐりんと首を回す。
そこにはまだ幼い子供が。青い瞳をこれでもかというくらい見開き、口をぱくぱくさせている。
「なんだガキか」
「ムキ――――っ!何なんだ一体!確かに今はガキだよ。でも面と向かって言われるとムカつくってば!!」
なんなんだこの高圧的な態度は
どこぞの狐と一緒だな!!
「体の調子はどうだってば?」
「……なぜオレを助けた」
おい。質問に質問で返すんじゃない。常識ないのかよ
「あんたがあそこにいるのが迷惑だっただけだってば。この森はオレのテリトリーだからな。何かあればオレが困るんだ」
腕を組み、ふんぞり返って言い切った。赤髪さんは視線を漂わせて気まずそうに口を開く。
「この家にはお前一人か?親はどうした」
「今のところ親はいないってば。ちょっと複雑な事情があるんだ」
二人とも今木の葉病院に入院中だからな!
が、これを悪い意味でとらえたのか眉を寄せる彼。
「お前いくつだ?」
よく質問するやつだな。てかなんでそんなこと聞くんだ?
首を傾げて考えたが、止めた。どうせわかんねえし。
歳かあ…。精神は今いくつだ?
前が十六だったから…
「に、二十一…だと!?
げふん。なんでもないってば。うずまきナルセ、五歳だってばよ☆」
「そうか二十一か」
「のぉぉぉぉおおおおおッ!!!」
シャァラップ!!レディーの歳を容易く口にするでない!ちくしょーめ!と床をどんどん殴りつける。
ああ…二十一か。うふふ。オレの青春時代って…止めよう。考えるだけ空しくなる。
「オレの名はサソリだ。お前の事情とやらは知らないが、世話になった」
そうですか。やはりあなたでしたか、旦那。
おっさんが割れて赤髪の少年が出てきた時点で薄々そうじゃないかと思ってましたよ。
「いえいえ。お気になさらず。それよりお礼なんていいのでお願いがあるってば」
「何だ?」
サソリからの返答に目をキランと輝かせる。
「ちょっとその体に興味がありまして。傀儡になっても意識があるとか…。ぜひとも仕組みを解明したいってば
…………その核の一部をオレに研究材料として提供するってばぁぁぁああ!!」
「なっ!?何をしやがんだてめぇ!」
ギャァァァァァァアアアアアア!!!!
その日は二度にわたり森に悲鳴が響いたとさ。
赤髪の美中年でした
(サンプルゲットォォオオ!)
(これで暇しないぜ…)
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