星の瞬き | ナノ

  エンジョイホリデー


6:00 起床
弱い朝日が窓から射しこむ時間帯に、オレはいつも目を覚ます。カーテン、窓を開け、部屋の中に新鮮な空気を取り入れる。

伸びをして眠気を吹き飛ばし、姿を現した九喇嘛におはようと告げた。そこから軽く身支度を整え、朝の修行を始める。

朝は軽めに、一日を過ごすのに支障を来さない程度に済ませる。手裏剣術や体術の型を丁寧に。大体いつもこのぐらいだ。


7:30
修行を終えた後、きちんと身なりを整えてからリビングに入る。


「おはようございます」


そこにはすでに朝食を用意し終えた白がいた。まだ出来たての食事にはほのかに湯気が立っている。

前まではひんやりとした部屋で、自分で朝食を作って食べたものだ。だけどもう一人で朝を過ごすこともない。いや、もう二人ではない。やけに上機嫌になって頬を盛大に緩ませながらおはよう、と返した。


「再不斬さんを起こしてきてくれませんか?」

「まだ寝てたの。へー、珍しい」


昨日夜遅くまで任務をしていたそうだから、と白は言った。いつもはオレより先に目を覚ましているはずなのに。本当に珍しいな、と思いながら再不斬の寝室に向かった。


「おーい再不斬ー、朝だぞー」


カーテンを開けた後、布団を叩いて起床を促す。もぞもぞと再不斬の体が動いたかと思うとギラリと猛々しい眼光が走った。


「……あ゛あ?」

「みぎゃあああああ!!助けて白ぅぅううう!!」


9:30 自宅出発
今日は元々近場の川で釣りをしようと約束をしていた。釣り具、餌、バケツ。水筒に手軽な調理器具、材料。腐っても忍だ。荷物なんてこれだけあれば十分。

オレの家の周りに広がる森は小さな大自然だ。言い方はおかしいがこれが適切。方向音痴が一歩踏み込めば迷いの森と化すであろう。それがオレが今のところ善良な一般市民様にちょっかいを出されずに暮らしていけている理由だ。

不便と言えば不便。楽と言えば楽。今現在の職業からすると修業も出来るし人も寄り付かないし気は楽だ。


「鮎!本命は鮎な!」


川の魚と言えばやっぱ鮎。塩焼きにして豪快にかじりつきたいのだ。サバイバルで楽しみたい夢の一つだよな!男のロマン!……あれ?オレ男じゃなかった。ま、そんなことはどうでもいいか。とにかく鮎が釣れればいいんだ。

到着した森中の小川の付近はひんやりとした空気が漂う。川自体は上流に位置するのでまだ角が尖った石がゴロゴロとしてある。


「再不斬、水遁はなしだからな」


忍術を使って魚を収獲、なんてそれじゃ釣りの楽しみがなくなっちまう。やっぱり釣りは時間の流れを感じながらしなきゃ。

水苔がへばりついた石で転ばないようにして川岸に立つ。大漁だと嬉しいな、なんて思いながら竿を振った。


13:00
釣れた魚は大漁、とまではいかないが程々に釣れた。狭いバケツの中で鮎が跳ねる。これから食事の準備、ってのは遅い方だが釣りに夢中になってたんだ。再不斬に「そろそろいいだろ」と言われるまで気付かなかった。

近頃物騒だからさ、気が休まるのがこんな時ぐらいしかないんだもん。と不貞腐れると再不斬から気色悪い、というお言葉をいただいた。酷い。


白が慣れた手付きで魚を捌き、串を刺して焚き木近くに指す。リクエスト通りそのままの姿で塩焼きだ。早く出来ないかな、待ち遠しいや。

パシャリ。残った鮎がまた跳ねる音がした。


「あ、コラ九喇嘛!つまみ食いするんじゃない!」


16:00
帰宅した後、特にこれといってすることもないので武具の手入れをする。刃こぼれがないか念入りにチェックをし、油分を拭き取る。道具は丁寧に扱い、万全の状態にしておかないといざという時役に立たない。

特殊な武器、普段滅多なことがないと使わないような類いのものは巻物の中に保管する。手裏剣、クナイ、ワイヤーはポーチの中へ。起爆札や応急薬が切れていないかもチェックをしておく。これで一通りやるべきことは終わった。

おっと。庭の植物に水をやっていない。忘れないうちにやってしまっておこう。


19:00
夕食の時間だ。昼に遊び回った分お腹はペコペコ。おかずの一皿として昼間の鮎があった。二食続けての魚だけど、残して腐らせるわけにもいかないし。

でも白のご飯は美味しいからね。飽きることなんてない。まさに絶品だ。


「そこの醤油取って」

「ほらよ」


一般家庭のような食事だけど、彼らは同居人。けれど一緒に暮らしていて楽。ある意味オレ達は家族なんだろう。

にしても九喇嘛。お前よく骨が喉に詰まらないよな。


20:00 入浴
今日一日分の汗をシャワーで洗い流す。程よい温度だ。汚れやら汗やら落とせてスッキリ。ついでにオレの心もスッキリ。

所謂前世というものが関わってるのか知らないが、風呂は好きだ。ビバ・ジャパニーズ文化。欲張って家の風呂は少し広い。露天風呂だの檜風呂だのは温泉で楽しむべきだと考えているからつけてはいないけれど。広い風呂ってのは中々に快適だ。


余談だが、あの二人と使ってるシャンプーとかは違う。ほら……一応これでも女の子だから……。なんで当然のこと言ってんのにこんな恥ずかしいんだろ。

湯船に浸かって120数えて今日は出た。ちなみにいつもは数えていない。ノリだ。


21:00
良い子はもう寝る時間。大人はまだ遊ぶ時間。確か読みかけの本があったはずだ、と書斎に向かった。

仕事のために必要とも言えるし、単に自分が好きだからとも言えるし、コレクションとも言えるし。書斎には大量の本がある。里の図書館ほど、とまでは言えないけれど。

知識を蓄えることは、最初は生きるために。次は戦うために。最後は興味で。今となってはこれで良かったとも言える。知識はあって無駄でないし、好きこそ物の上手なれ、と言うじゃないか。結果この書斎が生まれたわけだけれど。


書斎に籠っているといつも時間を忘れる。おかげで白に叱られる日も少なくはない。いつ再不斬も向こう側に回るのかとヒヤヒヤする。人の楽しみを取らないで欲しいものだ。

さてさて、まずはこの暗号化された文章を解読しようか。


22:30 就寝
気付けばこんな時間。明日は朝から任務が入っている。今日は早めに寝なければいけない。楽しい休日もそろそろ終わりだ。楽しかったな、にまにまと笑いながら布団を被り、眠りについた。

深い森のどこかで、フクロウが鳴いた。



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