君が好きなんだ
「ごめんなさい」
九尾の人柱力となった子供の中にいたモノは、そう言ってワシを封印したあの死神の小娘と同じ顔をしていた。
なるほど、こいつは今まで見てきた人間達とは違う。どちらかというとワシ達尾獣のような化け物と同じ類だ、この小娘は。
あの忌まわしい封印の日から今日まで、二つは運命共同体となった。けれどそれでどうにかしようとは思わない。不思議なことに。このおかげで今まで二人は生きてこれだのだ。
「オレってばさ、絶対今までの人柱力の誰よりも幸せだと思うんだ」
こんなにも九喇嘛を想っていられる。他人を想うことはとても幸せなことだ。ナルセはそう言った。
「九喇嘛はここで初めて“私”を知ってくれた。それがとても嬉しかった」
人間なんて独善的で身勝手で、だからこそ醜くて。でも離れられない。おかしな現象だ。きっとナルセも同じことを思っているのだろう、と九喇痲は思う。
「私の初めてを貰ったんだから、責任、取ってよねっ」
「気持ち悪いぞ」
「っはー!ひっでぇの!」
このツンデレお狐さんは相変わらず口が悪い。そんなのだからお友達ができないんだぞ☆
…とりあえずはその殺気を抑えようか。な?
でもま、そんな口の悪いところも好きなんだけど。ナルセはいつも、いくつもの冗談の中に、ほんの少しだけ本音を混ぜる。
「オレ、九喇嘛のこと大好きだよ」
「…フン」
君のその満更でもないって顔も、好きなんだ。
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