見極めは肝心@
森の中のオレの家。その中のリビングの机。それをオレ、再不斬、白、ハヤテくんが取り囲むようにして座っていた。
特別部隊の関係で話があるからとオレが三人を集めた。さあ本題に入りましょうという白の言葉に小さく息を吐いて口を開く。
「旅行に行こう!」
ひゅうと一気に部屋の温度が下がった気がした。じとっとハヤテくんがオレを睨む。
「旅行?へぇ…旅行ですか」
「嘘です嘘です!仕事です!」
仕事ならいいです、とハヤテくんは打って変わってにっこりと笑った。お、恐ろしいなおい!
今回の特別部隊の任務はこの四人で他国の諜報を行うことだ。諜報、というよりは他国の様子を見るだけの任務だが。一般人の振りをして他国の生活がどんなものか調べて感想文(報告書)を提出しなさいと。
「だから旅行って言っても間違いじゃないのに…」
「何か?」
「いいえ!なんでもありません!」
ハヤテくんのどす黒い笑み発動!さ、さあ!早く準備して出発しようかな!
*****
ここでオレ達の特別部隊について説明しておこうと思う。
里には大きく分けて二つの部隊が存在する。正規部隊と暗殺戦術特殊部隊、通称暗部の二つだ。里の忍の多くはこの二つの部隊のどちらかに所属することとなる。
ではオレ達特別部隊は?答えは「どちらでもない」だ。
木ノ葉の正規部隊も暗部も上に「火影」が置かれる。すなわち組織の頂点は火影となる。ただし特別部隊の頂点は火影ではない。“うずまきナルセ”である。簡単に言えばこの特別部隊はオレの私兵ということになるのだろう。
とは言っても任務がなければ組織が成り立たないので火影からこっそり裏ルートで依頼を受けているのだが。
未だ部隊に名を持たないオレ達はそれほどの任務を請け負わない。だからオレやハヤテくんは特別部隊に身を置く一方、下忍、特別上忍としても働いている。ややこしくはあるがこれが部隊の実情である。
「やっと到着ー!」
そんな部隊が今回訪れたのは木ノ葉とは違った意味でのどかな町。よく言えば平和な町で、悪く言えば平和惚けした町である。
九喇嘛は引きこもった。今回の任務には不参加。面倒そうなことは初めからパス、だと。全く誰に似たのやら……。
到着したのはもう夕方。日が沈んでいる。到着するまで何も食べなかったオレ達はひとまず腹ごしらえを済まそうとある食堂に入った。
「いらっしゃい!」
オレ達の他に客は数人。それほど広くない店内なので客入りが少ないようには見えない。
テーブル席に座り荷物を置いてメニューを流し見る。グルルル、と腹の音もなることだし、さっさと注文を済ませる。
ではこれからの予定の確認を、と白が口を開いた。
「ここにはどれくらい滞在するんですか?」
「そうだね。とりあえず一泊するのは確定事項かな?それから明日は市があるらしいからそれも見て帰ろう」
ご飯を食べてから宿に行くまでの時間、それから明日の朝。情報を集めるのでなく、ただの視察なのだからこれで十分であろう。ここは隠れ里というわけでもないので観光がメインになるであろうし。ならば早く帰って別に溜まった仕事を片付けなければいけない。
もしかしたら確認するほどのものでもなかったかもしれないと思いながらお冷を手に取り飲んだ。
「それより気にかかるのはあいつらがお目付け役無しにオレを里外に放り出したこと」
あの口煩い上役がぞろぞろいるのだ。そう簡単に許可されたとは思わない。
この、オレの部隊に何かしらの存在意義を悟ったのか。はたまた無理矢理に意見を通したのか。どちらにせよ知っても知らなくてもメリットなんて生まれなさそうだ。もう一度お冷やをくいと傾ける。
ドン、と食堂のおばちゃんが注文した料理を机の上に置いた。
「見ない顔だね。旅人かい?」
「はい、そうです」
おばちゃんの世間話とも取れる質問に答えたのはハヤテくんだった。いつものようにゴホゴホと咳込んでいる。
「こんな何もない町によく来たね。…刀なんて持って」
オレ達が各々一本ずつは持っている刀に対し、警戒の眼差しを向けた。それもそうだろう。こんな平凡な町に刀を何本も持ち込んでいるのだ。警戒もするだろう。
「あはは!実はオレ達旅芸人なんだ。剣舞を専門にしててさ。この間組んだばかりで人数がこれっぽっちなんだ。商いもしてるんだけど生活がカツカツで…」
機転を利かせた嘘だった。おばちゃんは疑いもせず「おやま!」と目を丸くした。なんとか上手く取り繕えたとほっとする。
「旅人だったのかい。すまないねぇ、疑うような真似をして。どうにもこの辺りも物騒になってきたもんだから…おばさんも怯えてるのさ」
物騒。この町に似つかわしくないような修飾語だ。今回の任務に関係あるであろう言葉。ご飯を口に運びながら会話を続ける。
「物騒、なんだ?」
「なんでもこの辺りで盗賊が出没するらしくてねぇ」
「あらま。こんな平和そうなのに?」
「物騒なことはどこにでもあるもんさ。あんたらも気をつけなよ」
おばちゃんとの会話、忠告はそれっきりで。オレ達はその後時間を潰し、宿に向かってこの平和と見れる町で一晩を過ごした。
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