さざ波の音楽
イタチと鬼鮫が任務に出るらしいから、我儘を言って同行した。目的地は海の近く、と言うからオレは一人磯で任務が終わるのを待つ。正直自分が海に行きたかったからついて来たんだが。
さざ波が一定のリズムを刻み、音楽を奏でている。それが妙に心地良い。
「終わりましたよ」
鬼鮫の声にそう、と答えた。
さらり。砂を掴んだその手から風に乗ってさらさらと砂が零れていく。砂に混じった貝殻がキラキラと光を反射させて美しい。
場を離れる気配を見せないオレに、鬼鮫を先に行かせて「いい機会だ」とイタチが話し出した。
「お前に言われて、サスケのことを何度も考えたんだ」
「そう」
「やはり、オレは敵としてサスケに殺されるべきだ」
メランコリーな気分が一変。カッと頭に血が上ったオレはイタチに掴みかかっていた。「ふざけんな!」と声を荒げていた。
無意識による行動だったけれど、反省はしていない。無意識の行動はある意味本心の行動だ。確かにふざけるな、と思う。オレはそんなこと認めない。
「勝手に周りを巻き込みやがって…お前らは置いて行くやつの気持ちを考えたことあんのかよ!勝手に仲良くなって、勝手に預けて、勝手に死んでいくのかよ…認めない…認めないからな…!」
「ナルセ…」
「なんで…なんで守らせてくれないんだよ!置いていかれるのは、もうたくさんなんだよ…ッ!」
馬鹿野郎、と繰り返しながらイタチの胸を何度も叩いた。宥めるようにイタチがオレの体を抱き止めた。ほんのりと彼の体温が伝わってくる。
人肌は好きだ。温もりを感じられることは好きだ。ただここにいるという確証がそれだけで得られる。
段々と落ち着きを取り戻していって、呼吸もいつものよう落ち着いた。中々ないことだし、とイタチの背に腕を回して力を込めた。ぐりぐりと胸に頭を押し付ける。
「…こういうことは、あまりするな」
「…ええ〜?もしかしてオレのこと意識しちゃってるわけぇ?」
いつもの調子を取り戻し、ニタニタと笑って悪態づいた。上目遣いでイタチの顔を見ると困り果てた彼は眉を下げている。
やれ仕方ないな、と息を吐いたイタチはぽんぽんと頭を撫でた。
「あと三分だけ」
オレは二人よりも長く生きた。なら、二人の幸せを願うならこんな命、安いものだ。だからイタチもサスケも、自分の命を犠牲にすることなんて許さない。
光のない世界に行くのは、オレ一人で十分だから。
鼓動と体温が安らぎを生む
(自ら暗闇に足を踏み入れて)
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