星の瞬き | ナノ

  賭け事の町


次の日、オレ達は泊まっていた宿を出発した。何やら綱手姫がいる場所の見当がついたようで。


「よォし!しゅっぱーつ!!」


はいはい。返事を返せるのはオレだけですからね。何も言わずにいたら空っ風が吹いた。あれ?と自来也が声を漏らす。なぁんでそんなテンション高いんだか。

修行の第三段階は歩きながら行うことになった。自来也は何の変哲もない風船を取り出し、それを膨らまして投げてよこす。


「第一段階は“回転”、第二段階は“威力”、そしていよいよ第三段階はコレだ!」


自来也は手にもう一つ膨らませた風船をただ持っているだけ。第一段階や第二段階のように割れたりはしない。

注意深く観察し続ける。耳を澄ませることも忘れない。何か擦れるような音がする。


「……で?」

「で?じゃないわ、で?じゃ!もっとなんかないんか!」

「はいはい分かったから。とっととその風船の中の回転の正体を答えろっての」


焦らしはいらんのんじゃ焦らしは。

面白くないやつ、と溜め息を吐いた自来也は左手に同じものを作って見せた。丸い球体である。球体の中のチャクラは高スピードで回転しているというのに形は保たれたままだ。


「小さな台風のようだろ!」


およそ風船と同じくらいの大きさ。球体の中のチャクラのは量は多く、凄まじい速さで回転しているというのに、自来也の右手の風船は割れる気配がしない。

次の修行の中身はこれまでのものを最大限に出し切り維持するもの。イメージは風船の内側にもう一枚膜を作り、その中にチャクラを圧縮する感じだそうだ。


自来也は木の幹にその螺旋丸をぶつける。今までの修行とこの第三段階の要領を取り込んだ場合。

結果は明らかだった。今までの要領だけを使った場合、少し木が螺旋状に抉れたかなー、ぐらい。第三段階の要領を取り込めば威力は格段に上がり、抉れた木の部分はこうぽっかりと。


つまりだ。この形を維持すれば力が分散されることなく、尚且つ回転は速くなり威力は高まると。


何故威力が高まるのか、よく理解できない方に説明しよう。

ここに小さな箱と大きな箱が二つある。この二つは完全に密封できるものである。この二つの箱の中に同量の空気を注入する。気圧が大きいのはどちらか?答えは小さい箱の方である。

空気の密度が大きいのは小さい箱。小さな器に大きな力を抑え込むと、そのエネルギーは分散することなく、圧縮された大きなものとなる。小さい箱がオレが目指す球体、大きい箱が分散したエネルギーの行き着く大気だ。

小さな球体の器に大きなチャクラのエネルギー。それが螺旋丸の威力の正体である。ま、本家のナルトがこんなに深く考えていたのかと聞かれれば微妙なんだが。


さてそれでは実践である。膜をイメージして乱回転。


パァンッ


「どうやら今回は簡単にはいきそうにないのォ」


やたら嬉しそうに笑う自来也。…苛立つな。こうなったら意地でも完成させてやる。


*****


修行をこなしつつ短冊街に到着する。短冊街は観光と同じくらい賭け事で有名な町。自来也の聞いた話によれば綱手はここで賭け事をしているらしい。…また賭け事か

歩きつつも掌の風船への集中を切らさない。


パァンッ


これで何度目であろうか。ポケットの中から新しい風船を取り出して膨らませる。


「ナルセー!急ぐぞ!」

「わかってるよ」



綱手の行方を訊ねるためにオレ達はある賭場に入る。自来也が写真を見せて訊ねる最中、ナルセは賭場のお兄さんに賭け事について話を聞いていた。


「いいか。偶数なら丁、奇数なら半だ」


へぇ…そういうルールだったのか。知らなかった。一つ勉強になったもんだ。ふむふむ。賭場のお兄さんもノリのいいやつだと笑う。


「丁だ」


自来也は情報を賭け事で手に入れる様子。原作のナルトは運が良すぎたが、オレはどうなのだろうか?ここは試してみるべきか?


「だぁあああ!!負けた!!」


賽の目は奇数。半である。丁に賭けた自来也は負けたようだ。


「オレの勝ちだ。千両はもらっていくぜ」

「ちょっと待って」


賭け事に負けしょげた自来也を除けてオレが前に出る。


「二千両賭ける。オレが勝ったらその千両と情報をくれ」

「なんだ坊主、やるってのか?…まあいいぜ」


ニヤリ、と笑った兄さんが賽を投げ、籠を被せる。


「半か、丁か?」

「半だ」


おいおい大丈夫なのか?と自来也は騒ぐが邪魔なので押しのける。籠がゆっくりと開かれる。

賽の目は三と六。つまりは半。オレの勝ちだ。呆気にとられる人の中、オレは得意気に笑った。



賭場で得た情報によりオレ達はとあるパチンコ店に移動した。だがそこにもいなかった。人を探して町を練り歩く。


「ったく、どこにもいねーじゃねえかよ!」


キョロキョロと綱手の姿を捜す自来也。しかし探せど探せどどこにもいない。

さてどこにいるんでしょうね、と先程道すがらに勝った富くじの懸賞金の詰まった財布を放り投げた。くじ運が強いって分かったなら使わなきゃ、な。


強運者が勝つ町
(思わぬところで儲かっちゃったね!)
―――――
圧力云々の話は確証がないので鵜呑みにしないでください。


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