苦渋の選択は
短冊街。文化財にしていされた短冊城を観光資源とした観光都市である。
その短冊城にて綱手とシズネ、大蛇丸とカブトは対峙していた。大蛇丸達が登場した際に城は破壊された。不穏な空気が漂う。綱手の様子をちらと見たシズネが警戒して、じり、と地を踏む。
「随分と久しぶりだね、大蛇丸」
かなり探したと大蛇丸は嫌味たらしく言う。今更何の用なのか。昔話をするわけでもあるまいし。
「実は少々お願いがあってね」
綱手は警戒を続けながら綱手は大蛇丸の様子を見る。
心拍が荒い。顔色からしてかなりの発熱、疲労状態が続いていることが窺える。そして何より気になるのはその袖から見える腕の包帯。
「綱手様、あなたならもうおわかりのはずだ」
「他を当たりなよ。私はもう医療は止めたわ」
「そうはいかない。この傷の重さはあなたならわかるはずだ。誰にもこの腕の傷は治せない。医療のスペシャリストとして名を馳せた伝説の三忍、綱手姫…あなた以外にはね」
カブトは綱手に巧みに言葉を使って頼み込む。
「その腕、ただの傷じゃないわね。一体何したっての?」
治す気などこれぽっちもないが、興味心から綱手は大蛇丸に尋ねた。特殊な呪印術か何かであろうか。
「なに…三代目とやり合った時にちょっとね」
綱手とシズネの二人は驚愕する。あの三代目と、木ノ葉に繁栄をもたらした猿飛ヒルゼンにこの男は何をしたと言うのか。
「あんた…ほんとに…」
ふん、と大蛇丸は笑った。
「そんなに怖い顔しなくてもいいでしょ。形あるものはいずれ朽ちる。人も同じよ。…それはあなたもわかってるはず。何せ、最愛の人を…二人も死なせたんだから」
ぎらり、と綱手は大蛇丸を睨みつけた。
最愛の人、と聞いてカブトは大蛇丸が何を考えているのか把握した。なるほど、酷いことを考える人だ。大蛇丸はくくく、と喉で笑った。
「いやぁ…あれは酷い死に方だった」
「このォ!!」
激情に駆られたシズネが綱手の前に出る。袖の中に隠した仕込武器。鋭い千本が飛び出す。カブトが大振りのクナイで弾く。最後の一本を目の前で受け止めた。先端から雫が落ちる。おそらく毒。仕込みであろう。
すぐさまシズネは飛び出した。右に左に陽動をかけつつ得物に手を伸ばす。
「(速い!)」
「邪魔だァ!」
「させるか!」
シズネとカブトが互いの首元を捕える。
「落ち着きな!シズネ」
綱手の声に二人はピタリと動きを止めた。息を荒げるシズネ。この付き人は、できるとカブトは判断した。
ゆっくりと二人は離れていく。小さく息を吐いて、ゆるりと綱手は口元に笑みを浮かべた。
「大蛇丸。あんた昔っから、そういうやつだった。私の性格はよく知ってるでしょ?おちょくるのは止めなよ」
にっこりと笑っていた綱手の顔が徐々に怒りに染まっていく。
拳を振り上げた。背後の壁が粉々に破壊される。強く、そして恐ろしい人だとカブトは思った。
「私達は争いに来たのではありません。あなたと交渉したいだけです」
交渉?と綱手は訊ね返す。そうだ、とカブトは返した。
「笑わせるんじゃないよ!さっきも言ったはずだ。目の前から消えろ」
「そういうわけにはいきません!」
「消えろ」
「大蛇丸様の腕を治せるのは、あなただけなんですからね」
「消えろ」
カブトは綱手の言葉に引く気を見せない。
「こちらもただとは言ってません。取引しませんか」
「五つ数える。その間に消えろ」
聞く気を見せない綱手にカブトは舌打ちをしたくなった。綱手は怒りの籠った眼差しで二人を睨む。
「でなければ、私が消す」
「落ち着いてください。あなたにとっても多分悪い条件ではありま「ご」
綱手のカウントダウンは始まった。交渉は成立しないようだ。カブトは舌打ちではなく溜め息を吐いた。
「いち」
シズネが動く。カブトも構えた。
「お前の愛した弟と男を生き返らせてあげるわ」
今まで口を開かなかった大蛇丸が言った。その言葉に思わず全員が動きを止める。大蛇丸は意地悪く笑った。
「私の開発した禁術でね」
蛇から迫られる
(最愛の人との再会の機会)
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