星の瞬き | ナノ

  温泉の効能は


「温泉だァ?」


綱手が言うには街道から外れたところにオススメの温泉街があるらしい。

湯の里温泉。疲労回復と美容に効果がある温泉らしい。シズネさんがガイドマップを見ながら説明してくれた。


だが自来也はいち早く木ノ葉に帰るべきだと言う。里の一大事なのだからのんびりする暇はないと。綱手は一日二日遅れても問題ないと反論する。オレは温泉に行きたいんだけどなー…いいじゃん、ねぇ

ギャルに大人気。しかも混浴。綱手が自来也にこそこそと耳打ちした。自来也が里に行く方でない道を進む。


「人間たまには息抜きがひつよー。一風呂浴びるとするかのォ!」


さっきと言ってることが真逆じゃないか。おもっきし鼻の下伸びてるぞ、このエロジジイ

いいってことよ、なんて綱手は言ってるけどほんとにいいのか?いいのか!?


******


温泉街は硫黄の匂いで溢れていた。オレ達が泊まる宿は“つるや”というところ。フロントに荷物を預けて部屋に向かう。

オレの部屋は自来也と綱手の真ん中。部屋に入って早速浴衣に着替える。もちろん女物。いやぁ、里にいちゃ女らしい格好はできないからね、中々に新鮮。最近少し髪が伸びてきたからそんな不自然ではない。くるりと一回転。

綱手は可愛いと頭を撫でてくれて、自来也は頭の先から足の先までまじまじと見つめた。


「馬子にも衣装、じゃのォ」


ドス。腹に一発。こんなやつは撲滅してしまえばいいと思うのさ。

さて、自来也は洗面用具を持っているから早速露天風呂に向かうのだろう。オレの視線に気付いた自来也が口を開く。


「なんじゃ?ワシはガキの体には興味ないんじゃがのォ。一緒に入りたいのか?」


自来也がそう言った瞬間三人揃ってじとっと見る。


「…軽蔑するよ」

「自来也様…女性の敵です」

「覚悟はいいな…自来也ァ…」


女の迫力に恐れをなした自来也は逃げるように温泉に走って行った。


「さぁてと!パチンコにでも行こうかねぇ。晩飯までたっぷり時間があるし」


また金を使う気ですか、この新しい火影様は。本当に賭け事好きでいらっしゃる。


「温泉には入らないのですか?」

「今行ったら馬鹿がいるからね。ナルセはどうする?」


パチンコ店は基本的に未成年お断り。だからどうするかと。


「オレはちと買い物に」

「そうかい?じゃあ私らは行ってくるよ」


じゃーねーと手を振りあって二人と別れた。


ここは里とは違うから人の視線を気にしなくて楽だ。いや、気にしなければそれで問題解決なんだけどさ、やっぱり気になるもんは気になるじゃん?

だからこういう息抜きは凄く安らかな気持ちになる。里に帰ったらまたあの日々だ。だったら今思う存分休んで帰りたいのさ!


和むわぁ。温泉といったらやっぱり温泉まんじゅう!折角温泉街に来たのだから買って帰らなきゃ。班員の皆と同居人にはもちろんだけど、カナデへの土産はいるのかな?

うーんどうしようと悩んでいたその時、ぬっと目の前に二人の男が立ち塞がった。


「お前、あの金パの姉ちゃんの連れだな?」

「ちょっと付き合ってもらうぜ」


*****

パチンコで負け続きの綱手に言いつけられてシズネは宿の帳場にいつも持ち歩いている鞄を取りに来ていた。

本当に綱手様の金遣いと人使いの荒さには困らされる。溜め息を吐きたくなった時、支配人から手紙を受け取った。

誰からであろう。とにかく中身を読んでみるべきだ。だが中身を見た瞬間に目を見開くこととなる。


「え〜〜〜ッ!」





ここは裏山の三本杉?ってとこらしい。

気づいたらあれやこれやとされて縄でぐるぐる巻きにされた。温泉街を歩いている時に声をかけられた男達にだ。ん?これどうするべき?

対処に困っている時、私服の綱手が現れた。


「止まれ!オレ達が誰かわかるな」

「赤城のとこの子分だろ」

「これまでの借金耳を揃えて返してもらおう!そのための人質だ」


見たところ綱手様の借金問題みたいだけど。オレ、関係なくね?しかも人質?うわぁお。この二人、ただの一般人みたいだから手を上げるわけにもいかないし。


「今んとこ手元にあるのはこんだけだ。持ってきな」


綱手は袖から財布を取り出した。それを放り投げる。一人の男が中身を確かめるが偽物と見破った。刀で真っ二つにすると枯葉に変わる。まぁた面倒事に巻き込まれちゃったよ、まったく


「確かにこれ売れば全額返済なんて容易いだろうな」


こっそり縄から抜けたオレは首飾りをぶら下げて言った。傍にいた男が目を剥いている。いや、オレ忍者だから【縄抜けの術】を使えばいいだけだったんだけどね。

ふと視線を感じた。


「それを売れば金になるんすね…」

「…へ?」

「だったらそれを寄越せェ!」

「に、にぎゃあぁあああ!!」


マジ危険!こいつらアウト!とにかく町に逃げるんだ!

全速力で丘を下る。ふ、と後ろを振り返ると男が追って来ていた。


「待てェ!!」

「いやだぁああ!!」


町の中を爆走する。人々は何だなんだとオレ達を凝視する。見るだけじゃなくて助けてよ!

ああもう!浴衣だがら走りにくい!このままじゃ捕まえられちまうよ!はっ!浴衣姿の綱手を発見!


「つつつ綱手様ァァアア!!助けてぇえ!!」

「おっ…と。こんな町中で何してるんだい、シズネも」


綱手に抱き着くことでやっと難を逃れた。後ろを追っかけていた綱手に化けたシズネを注意すると、シズネは苦笑いをしながら変化を解いた。


「赤城んとこの若い衆だな」

「じ、ジロチョウ親分!」


綱手の隣の渋いおじさんが追いかけて来ていた男達に声をかけた。どうやら知っているらしい。折角のんびりしようとしてたのにこれじゃああんまりだよ…

*****


綱手と一緒に歩いていたのは街道一の親分、ジロチョウ親分というらしい。

ジロチョウ親分の宿に移動後、事情を説明してもらった。

綱手の借金を返済してもらうために綱手を追っていたこの子分の二人は、確実に金を払ってもらうために連れのオレを人質にとった。脅迫文といってもいい手紙を受け取ったシズネは自分一人で何とかしようと約束の場所に向かった。オレの「首飾りを売れば…」の言葉で追いかけっこ開始。

こんなとこらしい。いい迷惑だよ、こりゃ。なんつーとばっちり


温泉街のゲートで親分と子分組に見送ってもらい出発。ほーんと、何がしたかったんだかあの二人は


「借金か…どうかしないとな」


あはははは!またオレに回ってくるのか……シズネさんと二人乾いた笑いを漏らした。

トントンがブーブーと綱手に向かって何かを伝えた。


「何?忘れ物?」


ああ、確かに何か忘れたような気がしないでもないな。でもやっぱり気のせいだろ。白い頭の変質者なんて、な!


疲労回復に美容、それから親交
(親分に貰った温泉まんじゅう!)
(美味そうだ…自分一人で…じゅるり)


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