星の瞬き | ナノ

  新しき火の影


里に到着後、綱手はうるさい相談役に捕まってしまった。ガミガミ言われてるんだろうなー、あの二人なんだから。想像はつくか。

疲れた疲れた、と綱手がシズネと外階段に出て来たところを捕まえる。


「綱手様。疲れるのはわかりますがオレとの約束、忘れてないよな」

「…何だっけ?」


シズネにこっそりと尋ねた。聞こえてますから、丸見えですから。


「帰り途中に言ったでしょうに。カカシ先生とうちはサスケの治療ですって。ついでにもう一人…」


あー、それねそれね。と綱手様は軽々しく言う。絶対頭の中から抜け落ちてたなと溜め息を吐いた。


「お!ナルセじゃねーか。何でお前がこんなとこいんだよ?」

「シカマルか。お前こそどうしたんだよ」

「何か知んねぇけど、親父がついて来いって」


外階段を上ってくる奈良親子。こりゃあ何かのパシリだろうな。シカマルはいつものように面倒だと顔にでかでかと書いている。


「お久しぶりです。綱手様」

「おお!奈良家のガキか!鹿の世話はちゃーんとやってるか?あの辺りの鹿の角はいい薬になる」

「はい、なんとか」


父親が珍しく丁寧語で話しかけている姿を見てシカマルはナルセの耳に口を寄せた。


「おい、ナルセ。若けーくせにあのえらそーな女誰だよ?」

「五代目火影様だ。実は五十代っていう年齢詐欺者だぞ」


シカマルはげぇ!?っと声を上げた。それ、聞かれたら絶対ぶっ飛ばされるな。


「じゃ、またそのうちな。ナルセ、行くぞ」

「はい、ただいま。じゃあなシカマル」

「あ、あれが五代目…?」


去っていく三人の後ろ姿を見つめてシカマルは思わず呟いていた。綱手のことをよく知らないシカマルにシカクは言う。


「おい、シカマルよ。あの人ァこの世で一番強くて美しい女だぜ。なんせ、伝説の“三忍”の紅一点だからなぁ」

「あ〜あ、女が火影かよ。女ってのはどーも苦手なんだよな」


シカマルの脳内に浮かんだのは同期であるいのとサクラの顔。シカマルの近くにいる女と言えば、シカマルにとってはこの二人が真っ先に浮かぶのだ。


「妙ににさばさばしてる割にやたらつるむし、仲いんだか悪いんだか、よくわからねーしよ。大体男が自分の思い通りになると思ってっからな。とにかくめんどくせぇな」


息子の言うことにシカクは困ったようにうーんと唸った。シカクは少し悩んでシカマルの肩を抱いた。


「シカマルよ、女がいなきゃ男は生まれねーんだぜ。女がいなきゃ男はダメになっちまうもんなんだよ。どんなにキツイ女でもな、惚れた男にゃ優しさを見せるもんだ」


いつも母ちゃんに頭が上がらないくせによく言う。これを言うと親父はなんて言うか、少し恐ろしかったのでシカマルは黙ったままでいた。


「お前も年頃になりゃわかる。…おっといけねえ!早く用事を済ませちまおうぜ。遅くなったらまた母ちゃんにどやされっからな。急げよォ、シカマル」


格好つけたと思ったらこれだ。シカマルは呆れたように溜め息を吐いた。


「女がいてもダメになる男がいるってこったな」


*****


木ノ葉病院のある一室。ベッドで眠り続けているサスケと、ずっと看病をし続けたサクラの姿があった。


「入るよ」

「あなたは…?」 


突然入り込んで来た人にサクラは警戒する。綺麗な人だと思った。でも一体誰なんだろうという疑問もあった。サスケ君はこんな綺麗な人と知り合いなのだろうか。


「サクラ、もう大丈夫だ!医療のスペシャリストを連れて来たからな」


ひょっこりと綱手の影から顔を出したナルセにサクラは驚いた。サクラを安心させるように微笑んだ己の師匠に、友人に涙腺が緩みそうになったが、ぐっと堪えた。

綱手は花瓶の二輪の水仙に目が行った。二輪はそれぞれ別の日に生けられたものだろう。毎日見舞いに来ていたのか。なんて、優しい子なのだろう。


「ガイ先生からお話は聞いています。サスケくんを、助けてあげて下さい」

「ああ、任せとき!」


ばっとお辞儀をしたサクラに綱手は笑顔で受け答えた。そしてサスケの額にそっと手を伸ばし、治療をほどこした。

それを見たサクラの瞳から一筋の涙が零れた。ようやっとサスケが目覚めるのだと。ちらりと綱手はその姿を見た。

やがてサスケの瞼が震え、目を開けた。まだ意識が朦朧としているサスケはゆっくりと体を起こした。それと同時にサクラがサスケに抱き着く。


「サスケくん…っ」


ぽろぽろと涙を流しながら抱き着くサクラを、サスケは何も言わずに見る。なんだか邪魔をしてはいけないように思えて綱手と共にオレは部屋を出た。


無言のまま廊下を進む。そこで自来也とは別れ、次にカカシ先生の病室へ。患者は沢山いる。ああ急がしや

カカシ先生は綱手に笑われていた。情けない。お前ほどのやつがな、天才だと思っていたのに、なんて。思わずカカシ先生は苦笑いをする。そしてオレに目を向けた。


「ありがとね、ナルセ」

「……どーも」


カカシ先生から礼を言われるなどこそばゆい。だから少々素っ気ない態度になっても仕方ないと思うのに、先生は綱手がしたように呆れて笑って見せた。


次に向かうはリーのところ。ガイ先生が早く早くと急かす。

リーの病室は重症人が入院する病棟の奥の方。ちょうど、向こう側からリーが松葉杖をついて歩いてきた。流石は医療のスペシャリスト、というか。綱手はリーの姿を見ただけで眉を顰めた。


「最善を…尽くしてあげて欲しい」

「…ああ、任せろ。お前は飯でも食いに行ってろ。里に帰って何も食べてないだろう」


リーとはまだそんなに仲が良いというわけではないが、彼には大きな借りがある。最後にもう一度頼み、お辞儀をして病院を去った。


*****


綱手に言われた通り昼飯を食べていなかったオレはついでに一楽のラーメンを食べようと足を向けた。丁度そこでイルカ先生と出会い、一緒に食事をすることになった。


「ふぅん、シカマルってば中忍になったんだ」


シカマルは第三の試験の本選を頭脳的に勝利を収めた。そのスタイルが高く評価された、と。予想できたことだが。

ずるずると麺を啜りながら会話を続ける。


「そういえばナルセは昇格しなかったのか?」


第三の試験での試合を見れば絶対に昇格できると思っていたんだがな、とイルカ先生は言う。


実を言うと、中忍に昇格しないことを条件に渋々特別部隊の隊長に就任したのだ。

2つの顔を維持するのは苦労するが、そこで引くオレじゃない。その要求を呑み込む代わりに、といろいろと突き付けてやったりもした。強制されるばかりというのも気に食わないからな。


「…人生色々なことがあるもんだよ、万年中忍で彼女無しのイルカくん」

「余計なことは言うな!」


ぱしんと頭を叩かれる。あー、嫌だな。とっとと引退してニートになりたいわ


*****


昼飯も食べ終わったし、サスケとサクラのいい雰囲気もそろそろ茶々を入れていいかな?と木ノ葉病院に引き返す。

ドアを開けば、そこはちょうどサクラがサスケにリンゴを乗せた皿を差し出しているところだった。


「「……」」

「…邪魔したわ」


まだ駄目だったな!邪魔しまくったな!今のシーンはサクラがサスケに皿を差し出して
「はいサスケくん、リンゴ剥けたよ。あ、まだ体動かないよね…。じゃあ、あーん」
「あ、ありがとう///」
とか言って甘々な雰囲気になるところだな!全く二人も久しぶりにオレに萌えを供給してくれるなら言ってくれないと!しょうがないからカカシ先生で遊んでk「ちょっとどこ行くのよ!」

え、えぇーー…ここで引き止めますか、サクラちゃん。オレのことなんて放っておいて好きなだけいちゃついてくれて構わないのに。

そんなこんなしてるうちに病室にリターン。


「……なんで兄さんは、イタチはあんなことをした」


病室に入るなりサスケと対峙してこんなシリアスな雰囲気。え、返却不可ですか?…ソーデスカー


「…イタチはお前は知らなくていいことだって言ってんだろ」

「お前だって真実を知れって言っただろ!?」


サスケは瞳に悲しみの色を混ぜて顔を俯かせた。それを見ているサクラはどうすればいいのかわからず不安げにしている。

サスケの容体とこの重苦しい空気。何か深刻な出来事が起こったのだということはサクラの目にも明白な事実であった。


「オレが早まったのかもしれない。…イタチの意志ならオレはそれに従うしかない。それに……真実の全てが救いになるわけじゃない。結構、残酷なもんだよ…」


サスケとサクラがはっとしてオレを見る。


「お前…何を知ってるんだ。どこまで知っている……答えろ!」

「言わない」

「答えろ!」

「言えるわけないだろ!!」


静かな口調から一変して叫んだオレを見て二人は口を噤んだ。痕が残るくらい握り締めた手は震えていた。

悔しそうに歯を食いしばりどこかを睨むサスケ。その目はまた憎しみに染まりつつあった。


「サスケ、恨むな。復讐をするな。うちは一族の名誉は…必ず、オレが取り戻す」


それがオレにできる償いだ。

それだけ言うとオレは病室を去った。病室内は刺々しいほどの沈黙に支配された。



知らぬ少年、既知の少女
(オレにできることは)


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