予定外の集合
ふと目を開ければ暗い洞窟の地面が目に入った。オレが目を開けたことに気付いたデイダラが傍に寄って来る。額に手を当てつつ起き上がった。
「体の調子はどうだ…うん?」
「少し、体がおも…ってうぉい!ビビビビビるわ!」
あまりの驚きにスパコーンとデイダラの頭を叩く。「なにしやがる!」なんてのは気にしてられない。だって、だって…
「なんで暁が全員揃ってるんだよ!!」
黒い下地に赤い雲の衣を着た人影が全部で十一。長門兄さんによる術で実体じゃないけど、今日全員揃うなんて聞いてない。事前連絡をよろしくお願いします。
「それで?体調はどうなんだ?」
「…体のダルさと頭痛…吐き気とか腹痛とか…」
「悪すぎだろ!」
そう、もうありとあらゆる症状が一気に襲ってきたっていうか。良いとは言えないな。ま、アレを使った直後なんだからしゃーない。
折角暁部隊が全員揃っているんだ。小会議をここで開くこととする。オレの合図でメンバーが円を作った。
「言っちゃあなんだが…この方法じゃオレの体が持たない。よって尾獣捕獲の命令を変更、人柱力ごと保護とする。人柱力の協力が得られれば組織に加入、そうでなければ…こういう手段はあまり好きではないんだけど」
「監禁、というわけか」
「…致し方ないね」
イタチの補足に頷きつつ簡潔に伝えるべきことを伝える。
「決してやつらに後れをとるな。尾獣は全て、我々が手にする。トビ、そちらの状況はどうだ?」
「ぜんっぜん調子良いですよ!もうバーッチリ!向こうは完全にボクらを味方だと思い込んでますよ」
現在は好調に事が進んでいる。これは負けるわけにはいかない戦いなのだ。後れをとるわけにはいかない。悟られるわけにはいかない。
おっとそうだ。ついでだ。今まで疑問に思っていたことを尋ねる。
「そう、昔っから謎だったんだけどさ。なんで暁ってこんなに危険視されてるの?ただS級犯罪者が集まっただけだってのに」
いやまあそれだけでも怪しさ満点だけども。テロリストが集まって組織作ってるわけだから。でもいくらなんでも危険視されすぎでしょ。それに一応暁は非営利団体だし。慈善活動もしてきたはずだ。
「いや、それは…」
長門兄さんがもごもごと言いよどむ。え?何?聞こえない。
「それは私が説明する」
「こ、小南!少し待て!」
「待てと言われて待つ人はいない。あのね、長門ったら慈善活動をする際、今まで一度も“暁”だって名乗ったことがないのよ」
予想できなかった理由に思わず唖然として頭を抱えた。ずっと疑問に思っていたことの理由がこんなしょぼいものだなんて…
「……長門兄さん、何してんのさ。まあ今となってはこの状況が良いものとなったけど…」
終わり良ければすべて良し、ってこういうので合ってるのか?それに長年の疑問も解決したことだし、良しとするか……なんか納得しづらいけども。
「ではこれで。これから尚忙しくなるから皆も頑張って欲しい」
了解と返事を返され、ブンと映像のようであった姿は消えていった。
気分の悪さはまだ続いている。何とも言えないこの感じは不愉快で仕方ない。洞窟特有の埃っぽさと湿っぽさがそれをさらに際立てる。
「何か足止めを仕掛けたのか?」
「オレの部下二人が生贄になってあの術を使った」
サソリの部下、確かあの砂のやつだったかな?可哀想に。成仏してくれることを願うか。
「もっと弔ってやったらどうなんだ?…うん」
「彼は“戦闘傭兵集団”の暁に惹かれたんだろ?だったらオレの知ったこっちゃない」
「本当に厳しいやつだ」
上に立つ者として正論を言っているまでだ。彼らは暁が生まれ変わる前のサソリの部下だ。不穏分子となる可能性だって考えられる。なら今排除しておいても問題はなかったし、彼らも一瞬だけでも暁の役に立てたと思うことができたのだ。むしろ感謝してほしい。
勝つためだ。あらゆるものを利用する。そのためなら鬼にでもなってやろう。
真実は大抵が残酷なのだ。彼らはそれを知らずに死ねただけ幸せ者だったではないか。どこかで生まれ変わっているといいな。
傍で横たわっている我愛羅に目を向けた。尾獣を抜いた影響で当分彼は目を覚まさない。
「大人に利用されてさえなければ、こんな目に合わずにすんだのに…」
そっと額の愛を撫でた。鏡のように位置する青いピアスが互いに輝いた。
戦争という歴史が彼という兵器を生み出した。オレは未だかつて戦争を経験したことがない。だからその悲しみはわからないし、終戦直後の傷痕も知らない。けれどよくないことだというのはわかる。
彼の立場とオレの立場が逆転していた可能性もある。言葉に表しにくい思いが淡々と積もっていった。
オレが我愛羅の額を撫でるように、サソリの手がオレの頭を撫でた。
「柄じゃないな」
「…うるせぇ」
予定内の研究の進行
(にしても体調はまだ万全じゃなうおぇええ)
(おいおいほんとに大丈夫かよ!?…うん!)
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