兄弟で仲間で
旅館を出発し、森の中にてヤマトが木遁忍術にて作り上げた館にて作戦会議を開く。
今回の任務はあまりにも不確定なものすぎる。何が起こるかわからない。そこで戦闘が起こった場合のことを想定しておく。
戦闘が起これば二人一組の相互支援のバディシステムを起用することとなった。サクラとヤマト。サスケとサイのチームだ。サクラはこの班の唯一の医療忍者。負傷させるわけにはいかないのでこういう組み分けとなった。
「今の話をふまえて普通はあまりやらないんだが、明日半日をチームプレイのシミュレーションにあてる」
ヤマトはファイル上の情報でしか彼らを知らない。メンバーの戦い方や戦闘スキル、術のスキルを把握するためだ。知っているかいないかで連携のスムーズさが左右される。
「慎重すぎると思うかもしれないが、これが僕のやり方なんでねぇ…付き合ってもらうよ」
*****
「…よく捕まえたね、二人とも。シミュレーションはこれで終わりだ」
サスケとサイでヤマト隊長を捕獲する訓練である。サスケの写輪眼、サイの【超獣偽画の術】であっという間にヤマト隊長は捕獲される。
二人の実力はそれなりに高い。しかし、連携プレーは残念な結果に。
「うーん…もう少し協力してやってもらえないかな?」
ヤマト隊長が苦笑混じりにそう言う。それに反応したのはサスケだった。
「こんな食えない奴と連携プレーをしろだと?」
新チームが組まれた日、サスケはサイから実力試しと襲撃を受けた。やっぱりまだ根に持っているとサクラは苦笑いする。
「…ナルセくんならどうしましたかね?君のことを考えながら行動してくれたでしょうか?君の“仲間”ですから。ただし、里を裏切り、君を傷つけた人を仲間と呼ぶのなら、ね」
サイもまたこれぞとばかりにサスケを挑発する。サクラとヤマト隊長はこれ以上厄介にならないようにと慌てふてる。
サスケは目線だけをサイに向けて口を開いた。
「…ああ、そうだな。あいつは仲間だ。救うためならお前とだって組んでやる」
それだけ言うとサスケは三人に背を向け、どこかへ行ってしまった。サクラはサスケのその言葉に再度決心を固める。
「(そうよ、私達が助けなくちゃ…)」
サスケの姿が小さくなったころ、サイが静かに口を開いた。
「なぜ彼はナルセくんのことをあんなにまで?」
サイの言葉にサクラは一瞬戸惑い、問いに答える。
「ナルセは…サスケくんの兄弟だから」
たとえ義理であろうとも、里を抜けるまで二人は本当の兄弟のように過ごしていた。幼馴染みだったし、同じ班員だったし。その時の二人は本当に幸せそうだった。
「あなたもお兄さんいるんだよね…その気持ち、少しはわかるでしょ」
「いや、まったく」
きっぱりと言い切ったサイにサクラは沈黙する。
「絵のタイトルの話したよね。ボクには感情ってものが無いんだ」
サイはいつもの変わらぬ笑みを張り付けていた。サクラは目を瞠り、サイはサスケが去った方向をじっと見つめる。
「何も感じないって……感情が無いってどういうこと…?」
「言葉通り、そういうことだよ」
なんてこそなさそうに。そう、感情など交えずそう言ったサイにサクラは何も言えなかった。
サクラはナルセの顔を思い浮かべ、きっと目を鋭くさせた。
「だからって……アナタも兄弟がいるなら、その兄弟がいなくなった時のこと少しは想像できるでしょ…?」
「ん?ああ、うん…まあね……――兄さん、もう死んでるし」
傍で話を聞いていたヤマト隊長は難しい顔をした。サクラはサイの兄がすでに亡くなっているとは思わなくて驚愕していた。
「お話はそこまでだよ。そろそろ出発するから荷物を取ってきな」
もうこれ以上はと判断したヤマト隊長が口を挟む。サクラも口を噤んで荷物を取りに行き、一行は出発した。
*****
天地橋に約束の時間までに到着し、作戦通りの行動をする。日は頭上にある。そろそろ正午である。
カカシ班は森の陰に隠れて橋をじっと観察していた。
やがてその約束の時間。橋の中央に四つの人影が現れる。それぞれマントを羽織り、フードで顔が見えない。この人達がサソリが言っていたものなのであろうか。
「ったく、お前達の仲違いのせいでこうして俺らが動かなきゃならねェ」
「本当に申し訳ない。あいつらに近寄るだけで拒絶反応が出るものだからね」
「予定もいくつか変更されたみたいですし」
風が強くてカカシ班にはその会話の内容を聞き取ることはできなかった。
だが、四人がフードを取り外したことでカカシ班は目を見開くこととなる。
「ちょ、ちょっとあれって…!」
「桃地再不斬に、白。しかも…大蛇丸と薬師カブトだと?」
ナルセ里抜け時に同じく抜けた忍びの二人。桃地再不斬と白。二人は正式には木ノ葉の忍ではないからさほど問題にはならなかった。
そう、問題なのは今二人が顔を合わせている人物達なのである。
「では例の物を」
手を差し出したカブトに白が黒い封筒を渡す。一応念のため、と中身を確かめてから懐に仕舞った。
「それじゃああなた達は早く引いた方がいいわね。ネズミもいるみたいだし」
大蛇丸が茂みに向けていくつか手裏剣を投げる。すでに感付かれていたようだ。観念したカカシ班は橋に出る。
「…そのようです。ボクらは次の場所に向かわなければいけませんから」
では、と再不斬と白は崖の側面を走り去っていった。大蛇丸は面々を見てペロリと舌なめずりをする。
「クク、幾度か見た顔ね。サスケくんもいるみたいだし、少し遊んであげましょうかね。あの子とどっちが強くなってるか…見てあげるわ」
大事な人だから
(だから、見捨てるわけにはいかない)
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