刹那 | ナノ


「俺は、アンタが大っ嫌いなんだよ………っ!」






「今日の手合わせ、加州と曉な」

審神者の言葉に、耳を疑った。



















「あー、本当最悪。よりによってなんでアンタと手合わせなわけ?」
「それ、私の台詞よ。加州清光」

本丸の演練場で、加州と曉が睨み合う。
前から、この二人は特に仲が悪かった。
審神者に愛されたい加州と、女だからという理由で審神者に大事にされている曉。
当然、加州は納得がいかない。
何かと加州は曉につっかかったり、曉も負けじと反発する。
一度、敵前で互いに足を引っ張り合い、二人とも重傷で帰ってきたほどだ。

「私としては、今ここであんたが降参して手合わせ終了っていうのが一番安全だと思うけど」
「何それ、アンタが降参しなよ」

先程から互いに言い合いをするばかりで、一歩も動いてはいない。
周辺には、暇を持て余した刀たち(短刀脇差や鶴丸など)が来ていた。
犬猿の仲のこの二人の手合わせが、そこまで気になるらしい。
そして、とうとう痺れを切らした曉が、加州に切りかかった。
曉は大太刀で、一撃の威力も高い。
対する加州は打刀で、曉より威力は低いが、素早さは断然上だ。
曉の一撃をまともに喰らって戦えるはずがないため、加州は曉の死角を狙ってばかりいた。

「っホント、セコい手ばかり使ってくるわね!流石万年愛情不足男!」
「うるさいな、セコいのはアンタだろ!入ってきたばかりの癖に、女だからって理由で主に愛されて!」
「知らないわよ!それは私のせいじゃないでしょ!?」

キィンという刀のぶつかり合う音と共に、二人の言い合いも聞こえてくる。
二人とも、相当相手のことが気に入らないらしい。
加州の攻めを曉が大太刀で防ぎ、一歩、また一歩と後ろへ下がってゆく。
するとその時、曉が何かにつまずいた。
これが、加州の狙っていたことだ。
一度、加州が曉の死角に入っても、攻撃しなかったときがあった。
そのとき、曉の足元に、つまづきそうな石を不規則に並べてみたのだ。
曉の重心がずれ、視界は意識せずとも空へと向かう。
広がった空に、突如影が差した。
ギラリと光る刃を持つその影は、その刃を曉の顔へーーー。

「…………………………っ!」

ぎゅっと目を瞑ると、しばらくして鈍い痛みが全身を襲った。
すぐ近くで、何かが地面に当たる音。
自分に向かった刃はどうなったかと、曉はそっと目を開けた。

「………………………………………え」

大太刀を離し仰向けになった曉の上に、加州が覆い被さっていた。
加州の手に握られた刀は、曉の首元に届くか届かないかというところで、地面に深く突き刺さっている。
長く艶のある髪が曉の頬にかかり、少しくすぐったい。

「な、ななな何して」
「俺は……主に可愛がってもらえるように、綺麗にして…負けて捨てられないように、鍛練もしっかりして…主が必要としてくれるように、一日中畑仕事もして…それが……それが………っ!」

後から入ってきた奴に、女だからっていう単純な理由で、主からの愛情を奪い取られて。
だから……だから……!

「俺は、アンタが大っ嫌いなんだよ………っ!」
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