刹那 | ナノ


「刀解か、破壊されるまでの間はよろしく」






審神者の叫び声を聞きつけ、他の刀剣達が鍛刀部屋までついたとき、もうすでに審神者は撃沈していた。
床へと倒れ込んだ審神者の前には、見慣れない少女の姿。
少女の身の丈ほどもある大きな刀を抱えるその姿に、一目でこの少女が人間ではないことがわかった。

「……いきなり現れて人の主に暴力ってどういうこと?」

一番先に審神者の元へ駆け寄った加州が睨む。
加州と同じく、少女を睨む者、刀に手をかける者、何もせずにただじっと見ている者…と、刀達の反応はバラバラだった。

「………………主?まさか、この男がここの審神者……っ!?な、何、私、これからこいつを主って呼ばないといけないわけ!?」

審神者を見てぎゅっと刀を握る手に力を入れる少女に、刀達の思考がストップする。
まさか、この少女は……。

「いったたたたた……あれぐらいで、腹パンすることねぇだろー……」
「主!」

腹を押さえて起き上がった審神者に、加州が目をきらきらと輝かせる。
が、少女はその様子を見ると、一、二歩後ずさってしまった。
一瞬、逆に主が何かをしてしまったのではないかと考えるが、そんなまさか。
確かに主は女好きだ。
だからこそ、女性、しかも少女に危害を加えることなんてしないはず。

「なんか知らないけど女の子が出てきたから、挨拶がてら事故を装って胸にダイブしようとしただけだろ」
「それのどこが"だけ"なのか、曉にはさっぱりわかんないんだけど!真顔で言われても困るんですけど的な!」

……前言撤回。
まさか主がここまでするとは。

「これは流石にフォローできないかな……」
「余所でやってくれ」
「せめて弟たちの目の届かないところで……」
「待って!?みんな待って!?一期さんオレのことを見てはいけないものみたいに短刀達を部屋から出すのやめて!?」

審神者に非難の目が注がれる。
当然のことだが。

「ああああああああ!もうこの話終わり!終了!はい曉ちゃん自己紹介よろしく!」
「ここまで来ていきなり振るって何よ!?」

そそくさと逃げていく審神者に、少女が叫ぶ。
部屋の外から「主様、鬼ごっこですかー?」という声と共に数人が床を駆けていく音が聞こえたので、しばらくしたら息を切らした状態で帰ってくるだろう。

「……曉。一応、だけどね。ま、一緒に作られた兄弟刀の方が性能は上だと思うから、そいつが来るまでは私で我慢して」

大太刀の少女___曉が、刀を握る手にぎゅっと力を入れる。

「刀解か、破壊されるまでの間は、よろしく」

そっぽを向いて、ぶっきらぼうに言った。
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