刹那 | ナノ


「ああああああ!もう嫌だああぁぁぁ!」




「ああああああ!もう嫌だああぁぁぁ!」

とある本丸で、一つの声が響き渡った。
歴史の改変を企む「歴史修正主義者」と、それに相対する「審神者」。
審神者は数ある刀剣を目覚めさせ、各時代にいる歴史修正主義者を倒すことを仕事とする、新たにできた職業のひとつだ。
審神者が目覚めさせた刀剣、通称「刀剣男子」と審神者は、本来主従関係にあるものだ。
が、現在叫んでいるこの男が審神者にも関わらず、刀剣男子たちは「いつものことだ」と軽く聞き流していた。
短刀たちにいたっては、自分たちの主を木の棒でつついている子もいる。
これが子供の無邪気さと言うものか。

「…主、何してんの」
「ゴロゴロしてんの!タタミ・オン・ローリングしてんの!あああ女の子が欲しい!短刀のちびっこたちは癒しだけども、それでもオレは女の子が欲しい!女の子を愛でたい!可憐な華を愛したい!乱では果たせなかった夢を果たしたいいい!」

泣きながら畳の上を転がる自分達の主に、刀剣たちは(一部を除いて)呆れるしかなかった。
この審神者は、重度の女好きだ。
街へ行けば、行って帰ってくるまでに大抵三人の女に声をかける。
たまに頬に紅葉をつけて帰ってくることもあったが、驚いたのは最初だけで、今では「またか」と全員スルーすることにしていた。
そして、現在目の前で転がる自分達の主を見て、刀剣たちは今日も思うのだった。
また始まったよ。

「……主、俺の事愛してない……?俺が、可愛くないから……?俺、捨てられる……?」
「違う!違うんだ加州!オレが女の子を愛するのと加州を愛するのはまた違うっていうかああもうとりあえず助けてじじい!」

どんどん話をマイナスな方へ持っていこうとする加州と、一度も本丸へ来たことのない刀剣を求める審神者。
話だけ聞けば、ブラック本丸なのかと疑いたくなるようだった。
実際の風景を見たらそんなことは言えなくなるが。
と、そんな空気を壊すかのようにして、スパァンと襖が開いた。
そこに立っていたのは、全力疾走してきたのか息を切らした様子の太刀、和泉守兼定。

「…っおい、主。今、鍛刀が終わったんだが……」
「あー、わかった今行く。で?今回は何?やっぱ打刀?」
「………………………いや、大太刀だ。………多分」

今日はずいぶんと歯切れが悪いなと疑問を感じつつも、審神者は立ち上がって鍛刀部屋へ行く。
後ろから、気まずそうな和泉守もついてきた。
審神者と和泉守が鍛刀部屋へ消えてから数刻後、本丸内には再び叫び声が響き渡った。









「神様、ありがとうございます!」









     
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