刹那 | ナノ


「でも、主様……!」






「大規模侵攻って、どういうことだよ」
「そのままの意味でございます。さあ、早く! 審神者様の本丸には、出陣命令が出ております! お急ぎください!」
「……! 場所は!?」
「審神者様のおられた時代より、ニ百年ほど前……"平成"と呼ばれていた頃にございます」
「……わかったよ! お前ら、出陣だ! 場所は平成。歴史修正主義者どもを叩き潰せ!」
「でも、主様……!」
「曉、早くしろ!」
「………………っ」

それは、誰もがわかったことだ。
今の時間帯は夜。大太刀や太刀、薙刀や槍は不利になる。場所が平成ということもあって、室内戦になるかもしれない。
幸い歴史修正主義者はとあるひとつの都市にしか攻め込んでいないらしく、すぐに帰城することはできる。が、それでもこの戦いが曉たちにとって難しいことに変わりはなかった。

「………曉」

声をかけたのは、加州だった。不安そうな曉の手を、しっかりと握っている。

「大丈夫でしょ、きっと。アンタは、ちゃんと俺が守るから」
「!」

二人の間に、沈黙が流れる。意外にも、その沈黙を破ったのは曉の方だった。

「……わっ、私が加州に守られるほど弱いはずないでしょう!? 夜戦でいくら不利だからって、遅れはとらないわよ!」
「……な、何だよそれ! せっかく人が守ってやるって言ってんのに! ほんっと可愛くないな!」
「うるせえええ! いつまでもぎゃあぎゃあ騒いでんじゃねええ!」

二人の言い合いは、和泉守の拳骨で終了した。
曉を和泉守が、加州を大和守が引きずっていく。引きずられながらも、曉と加州の睨み合いは続いていた。

「ねえ、知ってる? 和泉守兼定」
「あ? なんだよ」
「歴史修正主義者が侵攻した都市って、主様がいた都市らしいわよ。時代は違うけれど」
「……………………」
「それがどうしたって顔ね。まあ、良いわ。…………折れないでよ」
「それはこっちの台詞だっての」

出陣用ゲートの前で刀剣たちは刀を構え、平成へと飛び出していった。
願わくば、一人も欠けることなく、再びこの本丸へ。
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