「ふむ…予想より726秒も早い。よく来たね『新型』君」
「……普通に12分って言ったらどうですか」

私が呆れたように言うと、椅子に座って何やら機械を操作している人物、ペイラー・サカキは笑った。
どうやら彼が、アラガミ技術開発の統括責任者らしい。

「さて、と。見ての通り、まだ準備中なんだ。ヨハン、先に君の用事を済ませたらどうだい?」
「サカキ博士。そろそろ公私のけじめを覚えていただきたい」

横に立っていた男性が、サカキ博士に釘を刺す。

「適合テストではご苦労だった。私は『ヨハネス・フォン・シックザール』。この地域のフェンリル支部を統括している。改めて適合おめでとう。君には期待しているよ」

そこまで聞いて確信した。
あの試験部屋を上から見ていた人たちの一人だ、この人は。

「さて、ここからが本題だ。我々フェンリルの目標を改めて説明しよう。君の直接の任務は、ここ極東地域一帯のアラガミの撃退と素材の回収だが、それらは全てここ前線基地の維持と、来るべき『エイジス計画』成就するための資源となる」
「この数値は!」
「エイジス計画とは、簡単に言うとこの極東支部沖合い、旧日本海溝付近に、アラガミの脅威から完全に守られた『楽園』を作る計画なのだが…」
「ほほう!」
「この計画が完遂されれば、少なくとも人類は当面の間絶滅の危機を遠ざけることができるはず…」
「すごい!これが新型か!」
「ペイラー、説明の邪魔だ」

…あ、やっとツッこんだ。

「ああ、ゴメンゴメン。ちょっと予想以上の数値で舞い上がっちゃったんだ」

サカキ博士が謝ると、支部長は部屋から出ていった。
さっき、博士が新型と言っていたから、恐らくは私の数値だろう。
舞い上がるほどの数値ってどれだけなんだ…?

「よし、準備は完了だ。そこのベッドに横になって。少しの間眠くなると思うが、心配しなくていいよ。次目が覚めるときは自分の部屋だ。戦士のつかの間の休息というやつだね。予定では10800秒だ。ゆっくりおやすみ」
「……普通に3時間って言ったらどうですか?」

私がそう言うと、サカキ博士は笑った。
最後に聞いたのは、近くの機械が動く音だったような気がする。
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