「よう新入り、ちょっとした噂話があるんだ。耳貸しな」

アイテムを買いによろず屋まで行こうとすると、1人の少年に声をかけられた。
今日はなんて日だ。

「死んだエリックは、若手の神器使いとしちゃ腕は悪くなかったぜ。それが、こうもアッサリ死ぬのには、ワケがあるって話だ…」
「…?ま、い、一応聞いておきますけど……その、ワケってなんなんですか?」
「俺たちの中に、『死神』がいる…アラガミより危険だぜ?そいつとチーム組んだヤツは、バンバン死んでいくんだからな!」

もったいぶらないで早く話してくれ、と言いそうになったが、寸前でやめた。
というか、私の記憶が正しければ、死神というのは死を呼ぶのではなく、死んだ魂の回収役だったような気もするが。

「『死神』の名前はよ…ソーマってんだ」

……ああ、なんだそんなことか。
くだらない。

「『死神』、ねえ……私、基本非化学的なものは信じない派なので、死んだのはその神器使いが弱かっただけじゃないですか?」
「お前、目の前で見てまだ信じないのかよ。それとも、怖くて信じられねえってか?」
「弱い犬ほどよく吠えるって言葉は、あなたのためにあったんですねえ?おかげで勉強になりましたありがとうございます」

両者、同時に思った。
コイツ、気にくわない……!
互いに火花を散らせていると、後ろから「…おい」という声が聞こえた。
おそるおそる振り返ってみるとそこには、

「……いつまで油売ってやがる」

眉間にシワを寄せたソーマの姿が。

「うわあぁ!なななな何勝手に人の背後に立ってんですか!?今の季節に長袖フードっていうソーマさんの格好そのものがホラーなんですから、自重してください!」

ぎゃあぎゃあと騒ぎながらふと隣を見てみると、気まずそうに床に視線を落とす少年。

「チッ……さっさとしろ」

と階段を上って行くソーマを尻目に、私は少年を見ていた。
やっぱり、本物は怖いってか。

「あれぇ?さっきまでうるさく騒いでいたあなたも、本物が目の前じゃやっぱり怖じ気づいちゃいましたか?」
「うっせ!ああそうかお前はあいつと同類だから怖さなんて感じないもんな!」

コイツ……やっぱり気にくわない!
誰がソーマと同類だ!

「……俺は『小川シュン』。で?お前は何て名前だよ?」
「フィニリオン・ラティウス。あなたの名前、バッチリ覚えましたからね!後で泣き見ても知りませんよ!」

ビシッと指を差して言うと、私は階段を登り、今回の任務の同行者であるリンドウさんやソーマさんたちと合流した。
…あ、陰でリンドウさんが爆笑してる。
あいつ、今度会ったらフルボッコにしてやる!
























「……どうした、シュン。階段なんか見て」
「……いや、」









ーーーフィニリオン・ラティウス、か。
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