アナグラへ帰投しても、いつもと変わらない日常が待っていた。
誰もエリックの死に対して口にする者はいなく、いてもエリックの親族くらいだ。
人が死ぬのは当たり前。
それが、ゴッドイーターだ。

「ねぇ!エリックはもう会ってくれないの!?どうして!?」

次の任務を受けようとヒバリさんのもとへ向かうと、1人の幼い少女が叫んでいた。

「今度来たら、お洋服買ってくれるって約束したのに!エリナにお洋服くれるのがイヤになったの!?」

涙目で訴えてくる少女に、私は言葉をつまらせる。
そうか、この子は、エリックの……。
私は少女に声をかけると、近くのソファに座らせた。
いつまでもフロントにいては、任務に行けない。

「ねぇ、エリックは!?なでエリックは会ってくれないの!?」
「………………………………エリックには、もう会えません」
「どうして!?エリナのこと、キライになったの!?」
「………………………………死にましたよ」

少女の時間が、止まった。

「オウガテイルに喰われて。エリックは、死にました」

その瞬間、少女の目が見開かれ、今にも涙が溢れそうになるのがわかる。
ああ、やっぱり子供の泣き顔はイヤだなぁ。

「ウソ!ウソウソウソ!エリックは、絶対死なないって!エリナや他の人を守るために、華麗に戦ってくれるって!」
「…………………………………………」

きっとこの子は、もうわかっているんだと思う。
エリックが死んでしまったことに。
もう、何をしても会えないってことに。
子供の鋭さは、時に残酷だ。
この子は、認めたくないんだ。エリックの死を。

「……私がゴッドイーターになったのは、兄弟がアラガミに喰い殺されたからです」

ポツリと呟いた。

「"意思はあれど、力がなければ戦えない"。それが、私の一番上の兄の教えでした。私は、殺された兄のために、アラガミを殺す力が欲しくて、ゴッドイーターになったんです」

そう言って、私は席を立つ。

「これは、あなたの勝手ですが……ゴッドイーターの適性があった人の親族は、同じくゴッドイーターの適性を持つ事例が多いです。もし、エリックのことがどうしても割りきれないのであれば……ゴッドイーターの適性試験を受けてみてはどうですか?」

言い終わってから、少し後悔する。
なぜ、こんなにも幼い少女をこんな道に誘い込んでしまったのだろう。
私の大嫌いな人物の言葉を借りるとしたら、まさしくクソッタレな職場だ。
階段を上ってターミナルまで行こうとすると、「待って!」という声が後ろから聞こえた。

「…あ……え、えっと……私、エリナ。エリナ・デア=フォーゲルヴァイデ。あなたは?」
「フィニリオン・ラティウス。先日、ここ極東支部に配属された、新人ゴッドイーターです」

静かに、答えた。
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