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「ヒバリさん、私の今日の任務、何かありました?」
「あ、フィニリオンさん。フィニリオンさん宛てに、手紙が届いていますよ」
「会話のキャッチボールができていないと思うのは、私だけでしょうか?」

あは、と笑いながら、私はヒバリさんから手紙を受けとる。
封筒には、一点一画丁寧な文字で、「フィニリオン・ラティウス様」と書かれていた。
九咲リオン。この手紙の送り主で、私の義弟だ。

「…………げ」

美文字と一般的に呼ばれるであろう字で書かれていた内容は、私の気分を急降下させるには十分すぎるほどだった。




* * * * *




「あー本日も仕事日和だ。無事生きて帰ってくるように。以上」
「え?それだけ?」
「いちいちツッコんでると、身が持たないわよ」
「くだらん…」

相変わらずやる気のない挨拶に、呆れるしかない。
だが、そんな挨拶すら聞く暇もないのが、約一名。

「一人を除いて、心が一つになっているようで何よりだ」
「……へ」

全員の視線が私に注がれたことにより、私はやっと我に返った。

「ああ、すみません。単純な計算をしていたら、つい」
「計算? なんで?」

リオンから届いた手紙の内容は、四番目の義弟のせいで、食費がヤバイことになっているということだった。
私の家は、元々家族が多い。
私と両親を含めて十一人。……家族間の関係はやや特殊だが。
そのなかでも四番目の弟はかなりの大食らいで、私やリオンの稼いだお金は、ほぼあいつの腹のなかに消えることになる。残念なことに。

「……別に、何でもないです」
「そうか。このメンツでは初の四人任務だが、まあ、いつも通りやれってことで」
「あれ? そういえばリンドウさんは?」
「俺はこのあとちょいとお忍びのデートに誘われているんでな。今から動くのはお前らだけ……っと。早く来ないとすねて帰っちまうとさ。…たく、せっかちなヤツだ」
「ずいぶんと短気な女性ですね」
「お前みたいにな」
「なっ……わ、私のどこが短気だって言うんですかぁ!?」

そう言いつつ、私はちらりとソーマさんとサクヤさんを見てみる。
すごく、複雑な顔をしていた。特にサクヤさんは。
一方コウタは「どんな子なんだろ……」と呟くだけ。
リンドウさんの言う「デート」には、なにか別の意味があるのだろうか。

「俺はそろそろ行く。命令はいつも通り。死ぬな。必ず、生きて戻れ、だ」
「自分で出した命令だ…せいぜいアンタも守るんだな…」
「ソーマさんが、デレた……!? 一部の人にとってはご馳走でしょうけど、私にとっては、気味が悪いというか、気持ち悪いというか……」
「……………………置いていくぞ」
「待ってくださいよ、ソーマさん!? 女の子を一人残して行くなんて、最低な野郎ですね! 鬼ですね! 悪魔ですね!」

とりあえず、今は任務に集中しよう。食費のことはそのあとだ。
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