「お、君が例の新人クンかい?噂は聞いているよ」

一体何の噂なのか問いただしたいが、私はそれを必死に我慢する。
コウタと別れたあと、すぐに新しい任務が来ていた。
討伐対象は……多すぎてよく覚えていない。とにかく小型のアラガミがたくさん。
同行者は私を含めて3人。
私と、目の前に居るサングラスをかけた派手な人、そして少し遠くにいる青いフードをかぶった人だ。
こちらを見ず、目すら合わせようとしないその態度に、一目でこの人がどういう人物なのか予想ができた。
他者と関わろうとしない、俗に言う一匹狼というやつだ。

「僕はエリック。エリック・デア=フォーゲルヴァイデ。君もせいぜい僕を見習って、人類のため華麗に戦ってくれたまえよ」
「エリック!上だ!」

青いフードの人が叫びながらこちらに向かって走って来た。
気づいたとき、エリックの真上にはーーー1体のオウガテイル。
私は咄嗟に後ろに跳んで回避する、が。

「ーーー!」

悲痛な悲鳴と共に飛んできたのは、たくさんの赤。
赤、赤、赤。視界が赤く染まった。
オウガテイルの口元、足元に広がる、赤い塊。
近くに落ちている、黒く光るサングラス。
ーーー少しでも遅かったら、私もああなっていたかもしれない。
それは、まさしくーーー。

「ボーっとするな!!」

私の横から飛び出た青いフードの人にそう言われ、私はハッと我に帰る。
気づいたときには、青いフードの人が持つバスターブレードでオウガテイルは地面に倒れていた。

「…ようこそ、クソッタレな職場へ…」

何も音がしなくなった廃工場で、青いフードの人がポツリと呟く。

「俺は『ソーマ』。…別に覚えなくてもいい。言っとくが、ここではこんなことは日常茶飯事だ」

その時、ソーマが私の首筋にバスターブレードを向けた。
一瞬何事かとビクついて、ショートブレードを握り直す。

「お前は、どんな覚悟を持って『ここ』に来た…?」

ーーーそんなこと、言われても。
覚悟なんて、あるわけがない。
できれば、あのまま兄弟たちと貧しい暮らしをしていたかった。

「なんてな…時間だ。いくぞルーキー」

ーーー何それマジイラつく!

「……ルーキーじゃありません。私には、フィニリオン・ラティウスっていうちゃんとした名前があるんです!それに、残念でしたね!私、人の嫌がることをするのが大好きなんで、あなたの顔と名前はバッチリ覚えましたよ!」

先に行ったソーマの背中を目指し、私は走り出す。

「今はまだ私はルーキーですけど!そのうち、あなたよりも先に大出世して、顎でこき使ってやるつもりなのでそのつもりで!」

ソーマと並んだとき、私は思いきり足を踏み込む。
ショートブレードを構え、そしてーーー。

「……絶対、ですよ!ソーマさん!」

目の前にあるコクーンメイデンとオウガテイルの群れまで一瞬で移動した。
私自身もこんなに速く移動できるとは思ってなく、少しでも油断したら神器に振り回されそうだ。
やはり、ゴッドイーターになって身体が強化されたのがひとつの理由だろうか。
これが自分で制御できる人が「ベテラン」ってやつか。

「………クソッタレ」
「ちょ、クソッタレ!?今、クソッタレって言いました!?私から見れば、ソーマさんの方がクソッタレなんですよ!」
「いいから手を動かせ」

私とソーマさんの言い合いは、この任務が終わるまで続いた。
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