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スレイたちと別れたあと、アリアは一人、レディレイクに向かっていた。
途中何度も道に迷いそうになったが、その度にリズが道を教えてくれ、なんとかたどり着くことができた。
レディレイクの夜は静かで、あれだけ賑わっていた通りが、今は物音ひとつしない。
その方がアリアにとっては好都合なのだが、ここまで静かだとさすがに不気味に思えてくる。
ーーーアリアが探している人物は一人。
あの暗殺者と一緒にいた天族、デゼルだ。
彼は風の天族。
風の天響術を使えば、水の天族の力を借りなくとも、風に乗ってマーリンドまで移動することは可能なはずだ。

「…………………………ここ、どこ」

ーーーと思ってレディレイクまで来たはいいものの、レディレイクの中では完全に迷子になっていた。
進めば進むほどおかしな方向へと迷い込んで行く。
リズもこれには呆れ、ついに道案内を放棄した。
するとその時、アリアが急に駆け出した。

「見つけた」

そう言ってアリアが掴んだのは、全身を黒で包んだ天族、デゼルの腕だ。
運良く、とある建物の壁に寄りかかっている彼を発見できたらしい。

「っ!?なんだ……ガキ?」
「ガキじゃない。アリア。お前に、頼みがあって」
「断る」

アリアを完全無視し、デゼルは言い放った。
関わる気はない、と。

「お前の天響術を使って、あたしをマーリンドまで移動させてほしい」
「断る」

またしてもきっぱりと言い放ったデゼルに、さすがのアリアも諦めたらしく、「そ、残念」と言ってデゼルの腕を離した。
くるりと180度振り返り、


「せっかくあの導師の居場所を教えてあげようと思ったのに!」


立ち去る。
ーーーいや、立ち去ろうとした。
「待て」という声にニヤリと笑うと、アリアーーーリズは振り返った。

「……いいだろう。お前をマーリンドまで飛ばしてやる。その代わり、導師の居場所を俺に教えろ」
「もし、規約違反をした場合は?」
「殺す」
「あは、短気なんだねぇ」

リズがデゼルの前まで行くと、デゼルは目の前に天響術を発動させた。
風が舞い、先程までは静かだった裏道が急に騒がしくなった。

「あ、そーだ。規約一個追加。ボクのことは絶対にアリアには話さないこと。話したら今度はボクがキミを殺しに行くよ」

次の瞬間、リズの姿は風と共に消えた。
今頃、マーリンドの街の近くにでもいるだろう。
帽子の鍔を下げ、再び壁に寄りかかる天族の姿を見た者は、誰もいなかった。




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