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聖堂の前に行くと、人だかりができていた。
どうやら、あの傭兵団が野犬の群れを倒したらしい。
周囲の人間や傭兵たちにはただの野犬に見えているが、あれは立派な憑魔だ。

「あの。頼みがあるんだけど」
「あん?俺たちは『木立の傭兵団』だ。ガキの子守りは受け付けてないぜ」
「あなたたちにしかできない仕事だ」
「団長のルーカスだ。仕事ってのは?」

それから、スレイは仕事の内容を話した。
話してみたがどうも好きにはなれない、というのが、アリーシャとミクリオのルーカスという男に対しての第一印象だった。
物欲的なものしか見えていない目だ。そこに善悪もない。
ただ純粋に、金が欲しいだけだ。
ルーカスはスレイが導師だと知っても、未だにバカにしたような目で見る。
それが、アリーシャやミクリオの不信感や不満を高めていった。

「俺たちを利用して、美味しいところを独り占めする腹なんじゃ?」
「そんなことはしない!」
「アリーシャ。コイツに何を言ってもムダ。傭兵なんて皆こんなもの」

こちらが向こうを信用していないのと同じく、向こうもこちらを信用していないようだ。
まあ、傭兵なんてこんなものだろう、というのが、アリアの考えだったが。
スレイが冷静にどうすればいいか聞くと、金を持ってこいと言われた。
その額、5000ガルド。
スレイはしばらく考えたあと、素直に5000ガルドを支払った。

「へぇ……思ってた導師とは違うな。ちょっとは信用できそうだ」
「金を出せば信用するのか?」
「じゃあよ。なんで動いたら御満足なんだ?」
「……使命感や義侠心だ」
「俺の部下が疫病で死んだとしてだ。そんなもんが残された身内を世話してくれんのか?一生?」
「そ、それは……」

ルーカスの言葉を聞いて、アリーシャは黙ってしまう。
確かに、ルーカスの言うことも事実だ。
アリーシャはそれもちゃんとわかっている。

「……ま、傭兵がタダで動くのって、食材屋が無料で人に食べ物をあげることと同じだし」
「……それが、餓死寸前の民だったとしても、同じことを言うのか?」
「仕方ない。食材屋だって、生活がかかってる。何人居るかもわからない人間に、無償で食材を配って歩いてたら、いつかはこっちが餓死する」

それが、傭兵などの命を懸ける仕事だったら、なおさらだ。
命がいくらあっても足りない。
アリアが淡々と述べる。
研究所からの任務をこなしていく上で、そのような人間を何人も見てきた。
だからこその言葉だ。

「もっと現実を見な、お嬢ちゃん」

その言葉は、アリーシャを黙らせるには十分すぎる言葉だった。

「さて、依頼はこの街の警備だったな。承るが、見返りにーーーこの街好きにしちゃってもいいよな?」
「本当にいいのか、スレイ?」
「心配ないよ。契約を重んじる人が、そんなことしないさ」
「合格だな」

これまでのルーカスの態度は、スレイを試すためだったらしい。
ルーカスは傭兵たちに指示を出すと、支払った5000ガルドの半額を返してきた。
今回の仕事の釣りらしい。
それからスレイたちは道具などを調達すると、街を出た。
南西の憑魔を倒しに。




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