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大樹を器にして、早速ロハンは加護領域を展開しようとした。
が、南西の方角にまだ強い憑魔がいるらしく、その憑魔の領域のせいで他の憑魔の侵入を止められないらしいのだ。
その憑魔を鎮めなければ、加護は出来るが憑魔の侵入は止められない。
だが、穢れを唯一祓えるスレイが、警備もまともにできていないこの街を離れることは難しい。
するとその時、スレイが一瞬フラついた。
本人は立ちくらみと言っていたが、それが立ちくらみなどではないことを、天族達は知っている。
エドナの提案で、今日は宿屋で休むことになった。

「具合はどうだ?」

翌日、スレイはいつもと変わらない様子で宿屋から出てきた。
先に宿屋から出ていたアリーシャが声をかける。
アリアも一緒だ。

「昨日のは知恵熱だからね」
「そうなんだよね〜」
「おい。なんでボケが僕がつっこまなきゃならないんだ?」

早速ミクリオとスレイは朝から漫才を披露していた。
そんな姿を見てアリアは、「やっぱ天然」と呟く。
アリーシャは、いつものスレイの様子を見て安心していた。
その時、宿屋の隣に馬車が止まった。
見覚えのある二人が乗っていて、恐らくセキレイの羽だろう。
どうやらネイフトから、追加の薬が届いたようだ。

「あと、伝言。『マーリンドに向かう傭兵団を見つけ、街の警備を頼んだのですが断られてしまいました。レディレイクに援軍を要請しましたが少し時間がかかりそうです』だって」

それを聞き、スレイが閃く。
確かに、動物憑魔くらいならば、人間でも倒すことは可能だろう。
それが戦いを本業にしている人間なら、なおさら。

「伝言、伝えてくれてありがとう」
「ねえ、なんでこんな面倒なことしてんの?」
「なんでって……困ってる人をほっとくのイヤだから」
「……ふーん、わかった。スレイが変な奴だって」
「今頃気づいたの」

さらりと言ったアリアが、半眼でスレイを見つめる。
スレイは困った様に苦笑していた。
どうやら、その傭兵団はまだこの街にいるらしい。
とりあえず、その傭兵団に会ってみることにした。




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