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「……ん。結構いい感じ」
〈アリア。ボクなしでも大丈夫?〉
「問題なし」

さっそく大鎌を構えると、パピーに向かって走って行く。
やはり3人では相当苦戦したのか、体力切れ間際のアリーシャ、ミクリオ、エドナがいた。
アリーシャに向かって降り下ろされた尻尾を、間一髪のところでアリアが防ぐ。
こっちがヒヤヒヤした、というリズの言葉を聞き流しながら、アリアはアリーシャに向き直った。

「Entschuldigung.(エントシェルディグング)遅れた」
「アリア!そうか、君も従士に……」
「喋るのは後にしてくれ、アリア、アリーシャ!」

アリーシャはパワーアップしたアリアの登場に驚くが、ミクリオに一喝され、再び槍を構え直す。
アリアも「めんどいな」と呟きながらも、パピーの頭部を狙って大鎌で斬りつけていた。

「やっぱ人数が増えるとかなり違うな……アリア、後ろに下がって援護を!」
「ja(ヤー)」

スレイに言われた通り、アリアは一度後ろに下がって詠唱を始めた。
詠唱時間は短く、すぐに発動できた。
が、

「……効かない!」

アリアの放った術は、パピーには全く効かなかった。
別に、パピーに雷耐性があるというわけではない。
だが、効かないのだ、全く。
従士契約を行う前の、アリアの攻撃のように。

「(……!リズは、従士契約を引き継げなかったから………!)」

その事を考えて、一瞬動きが止まる。
その一瞬を狙って、パピーは攻撃してきた。
パピーの爪が、アリアに迫る。
あと3センチ、2センチ、1センチ………。

「……………………………………………ッリズ!」

パピーの爪がアリアの頬をかすると同時に、アリアの姿は消えた。
が、その姿はすぐに見つかった。
パピーの首元に。

「………アリアに傷つけるとか、死罪決定。異論は認めないッ!」

アリアーーーではなくリズが、大鎌をパピーの首元に突き刺す。
それが決定打となったようだ。
パピーは力尽きて倒れ、消えた。
1人の天族に、戻ったのだ。

「浄化の炎……あんたは導師か?」

起き上がった天族が聞くと、スレイは頷く。
彼はロハンといい、かつてこのマーリンドの加護天族だったようだ。

「ーーーロハン様」

アリーシャが前に出て、ひざまずく。

「ハイランド王国王女、アリーシャ・ディフダと申します。あなたを憑魔にしてしまった責は、人心を荒廃させた私たち、ハイランド王室にあります。ですが、必ず立て直して見せます!罰が必要なら、私が受けます。ですから、どうか今一度だけ加護をお与えください」

アリーシャが天族が見える理由を、スレイの従士にしてもらったから、と言うと、ロハンは信じられないとでも言うような顔でスレイを見た。
アリーシャはわけがわからず困惑し、スレイは微笑むだけ。
否定も肯定もしない。
天族の皆も、俯くだけだ。
ただ一人、アリアだけが無反応だったが。
そのスレイに背中を押されたように、ロハンは再びマーリンドの加護天族となった。
全てはマーリンドの民のために。
全ては身を削ってまで戦う、一人の若き導師のために。




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