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山の中腹辺りに行くと、急に空気が変わった。
穢れが格段に増え、胸が圧迫されるような感覚に陥る。
とはいっても、アリアは穢れを感じないので何もないが。

「なんだ……これ……」
「そんな!これは領域?」
「領域?こんなに穢れているのが?」
「スレイさん逃げましょう!領域は強い力を持つ者が身にまとうものですの。そこに善悪も穢れも関係ありませんわ」

それでも、地の天族をまだ見つけていないのに、と躊躇するスレイに、ライラ、ミクリオが説得をしようと試みる。

「………!スレイ、何かが……!」

アリアが何かに気付き、叫んだときにはもう遅かった。
どこからか咆哮が聞こえ、突風が巻き起こる。
四本の足、巨大な翼はまさしく

「これが……伝説の……破滅の使徒……ドラゴン……!」

そう、スレイたちの前に現れたのは、伝説上の生き物とされている、ドラゴンだった。

「はは……やばいな」
「完全ゲームオーバー……逃げるのもムリ、か」
「私のせいですわ……自分の記憶に頼って、ドラゴンなど居るはずないとタカをくくってしまった……」
「じゃあ、このドラゴンは最近現れたってこと?」
「だね。結構昔から生きてる、リズも見たことないって言ってる」
「………?アリア、君は、二重人格なはずじゃ…………」

察しの良いミクリオが、アリアの矛盾に気づく。
アリアは人間だ。これは間違いない。
そしてアリアは、リズの事について、二重人格だと言った。
それならば、アリアと同じ、またはアリアよりも短い年月しか存在していないはずなのだ。
しかし彼女は、リズは結構前から生きていると言った。
これは、明らかな矛盾だ。
その矛盾を紐解こうとミクリオは考えるが、

「まさか!あなたは……エドナさん!?」

ライラの声で考えが途切れる。
仕方なく、この事を考えるのは後にした。

「ああ……エドナさん……まさかあなたがドラゴンになってしまうなんて」
「そんなわけないでしょ」

スレイでも、ミクリオでも、アリアでもない人物の声が聞こえ、ライラは驚いて固まる。
その瞬間、ドラゴンは突如現れた岩に囲まれてしまい、動けなくなってしまった。
すると、近くから傘をさして歩いてきたのは、一人の少女。
一見、アリアよりも幼そうに見えるが、れっきとした天族だ。
先程の地の天響術も、彼女の仕業だろう。

「え、エドナさんが二人?」
「だからなんでそうなるの。だめよ、お兄ちゃん」

エドナと呼ばれた少女が振り返ってドラゴンを見るが、ドラゴンは暴れるだけ。
返事などない。

「もうワタシの声も届かないのね……来るわ、全力で逃げて!」
「彼女が探してた天族なの?ライラ」
「はい!」
「話してる場合?走って!」




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