38


「……………………………………」
「お前は暗殺団の……?オレを狙っているのか?何で?」

霊峰をしばらく進んでいくと、見覚えのある服を着た男が立ち塞がった。
その服は間違いなく、暗殺ギルド、風の骨のものだ。

「……貴様が導師であると吹聴おかげで人心がどれほど乱されているか……」
「え、でもオレ、本当に導師……」
「スレイ。コイツに何を言っても、導師だと証明できなければムダ」
「くっ!」

男はそのまま、襲いかかってきた。
ナイフ裁きから、身のこなしまで、全て暗殺術特有のものだ。
が、いくらナイフで斬りかかってこようが、アリアはすぐに避けられた。
頭で考えているのではない。
覚えているのだ、体が。
しかし、問題はスレイだ。
スレイの剣術はほぼ我流で、このような暗殺術を知っているわけがない。
そのせいで、先程から暗殺者の動きに困惑してばかりだ。
相手もそれがわかっているのか、スレイばかりを狙ってくる。

「……はあ。めんどいな。ま、仕方ないか」

アリアはそう呟くと、姿勢を低くした。
そして、

「ーーー霧桜」

次の瞬間、アリアの姿はそこにはなかった。
いつの間にか、アリアは暗殺者の真上に居て、そして、大鎌を構えたまま急降下した。
人体の急所ギリギリのところを狙ったので、体は痺れているが軽いかすり傷程度だろう。

「つ、強い……」

暗殺者はそう言って、倒れてしまった。
スレイが暗殺者に近寄る。
が、その時、スレイの足元に一本のナイフが刺さった。
暗殺者の持っているものと、同じデザインだ。
そしてそこに現れたのは、もう一人の暗殺者。
恐らく女性。

「……引くべきだ。あれは尋常じゃない」
「ですね……憑魔でもありませんし」
「そうしよう。むしろ逃げる機会をくれてるって気がする」
「Ich bin ganz Ihrer Meinung.(イッヒ ヒン ガンツ イーラー マイスング) 意義なし」

暗殺者の女性は、地面に倒れている暗殺者の男性を連れて、何処かへ行ってしまった。

「また襲ってくるだろうな……」

一つの不安を残して。




|

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -