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アリーシャが人々を説得している間にスレイたちが霊峰に行くことになり、霊峰でスレイたちを待っていたのは、やはり憑魔だった。
スレイたちはそれぞれの武器を取り出し、憑魔と戦っていた。
が、
「見てらんねーぜ。ボーヤたち」
そう言って現れたのは、一人の天族の男。
男はニヤリと笑って腰から拳銃を取り出すと、自らの頭に銃口を向けーーー打った。
「なっ……あ、アイツは………!」
突如、男の周囲には竜巻のようなものが起こる。
いつの間にかリズも出てきていたようだ。
「このザビーダ兄さんがお手本ってヤツを見せてやるぜぃ」
男ーーーザビーダはそう言うとこちらに向かって走りだし、目にも止まらぬ速さでペンデュラムを駆使し、憑魔を撃沈させた。
それでもまだ起き上がってくる憑魔を見てザビーダは再びニヤリと笑うと、先程の銃口を向けた。
「いけません!」
ライラの声も聞き入れず、ザビーダは銃を打った。
弾は憑魔に命中し、そのまま倒れる。
そう、殺したのだ。憑魔を。
「殺……した……?」
「貴様!」
「憑魔は地獄へ連れてってやるのが俺の流儀さ」
ーーーああもう!ホント、コイツってば思い通りにならないから大っ嫌い!
リズが心の中でそう叫んだ。
「それに、殺すことで救えるヤツも……いるかもよ?」
「よくも天族が……」
「あっはっはっは!お美しい!導師様ご一行はいつの時代も優等生揃いだ、なあ?」
ザビーダはライラを見るが、返事はない。
あえて言えば、ライラの沈黙が返事代わりだ。
するとリズが、三人の前に庇うようにして立つ。
「スレイが導師だって知ってたわけ?」
「わかるさ。憑魔に挑む物好きなんざ、そうはいないからな。俺はザビーダ。よ・ろ・し・く、導師様」
リズが敵意むき出しに言うと、ザビーダは笑って答える。
同時に、スレイに向かってペンデュラムを投げてきた。
「あんた達には霊峰はまだ早いなぁ。ドラゴンがあくびしただけで眠っちまいそうだ。永遠にな」
「………だ・れ・が、霊峰はまだ早いだってぇ?」
突然、リズがキレて大鎌を取り出す。
リズが雷を操るせいか、周囲にはパチパチと電流が走って見えた。
「おっと、ドラゴン退治に来たら、狼と出会うなんてな。おお怖いねえ」
「っるせぇ!」
恐怖を感じさせない物言いに、リズは更にキレる。
「ドラゴン退治が私たちの目的ではありませんわ」
「そうなん?それもつまんないな。ライバルが居た方が燃えるのに」
「ザビーダ、ドラゴンと闘うつもりなんだな」
「そのつもりだったんだが……パスするって今決めた」
そう言いながらザビーダは、四人に向かってペンデュラムを投げる。
「一体何が目的だ!ザビーダ!」
「ヤツに導師様ご一行と狼ってご馳走をみすみすくれてやる気はないってこと」
「ああ!だからコイツってば大っ嫌い!」
リズは不満を叫びながら、スレイとミクリオ、ライラは無言で武器を構えた。
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