35


川は、相変わらず氾濫していた。
アリーシャが橋の復旧が進んでいない理由を確かめに行くと、

「おお!その出で立ち!そなた導師殿では?」

川の側に立っていた老人に話しかけられた。

「うん。スレイっていいます。こっちはアリア」

スレイが軽く挨拶をすると、老人はネイフトと名乗った。
向こう岸にある、マーリンドから来たらしい。
ネイフトに、マーリンドに疫病の薬を届けてもらえないかとさりげなく話を持ちかけられるが、ライラが止める。
ライラに促されるまま話を断ったスレイは、不思議そうな顔をしていた。

「ごめん。力になれなくて……」

ネイフトはスレイに「気にするな」と言うと、立ち去ってしまった。
スレイはネイフトの後ろ姿を見つめる。

「ライラ。どうして手伝っちゃダメなんだ?」
「僕も知りたい。スレイと従士であるアリーシャだけなら僕の力でこの川を渡ることは可能だ。薬を届けるくらいできるけど?」

スレイとミクリオが尋ねる。
アリアには、ライラが言うであろうことが、なんとなくわかっていた。
スレイが導師の力を使って荷物を届けてしまうと、他の人もスレイの力に頼り、荷物を届けてほしいと言ってくるだろう。
それら全てを受けてしまうと、いつまで立ってもスレイたちは前に進めないのだ。
アリアの予想通り、ライラはアリアが考えたことと同じことを言った。

「……橋の基礎部分を岩で作り上げる事はできないかな。地の天族に頼んで川底を隆起させて」

人々にアテにされず、かつ導師にしか出来ないことを考えた結果、スレイはこの考えにたどり着いた。

「どう?ライラ。アリアも」
「はい♪良いと思いますわ」
「意義なし。で、地の天族はどうするの?」
「それでしたら、ここの西にそびえる『霊峰』と呼ばれる山に、地の天族の方がおられたはずですわ」
「アリーシャにも伝えよう」














〈アリアーどうするー?このままじゃ、アリアは置いていかれること確定してるよー?〉

スレイがアリーシャと話している最中、リズが話しかけてきた。
アリアは静かに目を閉じる。

「(……どうって?)」
〈さっきミクリオさー、"スレイと従士であるアリーシャだけなら"って言ってたじゃん。それって、従士じゃないアリアはこの川を渡れないってことでしょ?〉
「(……………………………………)」

その話は、確かだ。
元々、最初スレイたちと会ったときは、道に迷ったからレディレイクまで連れていってほしいということで同行していたのだ。
それならば、レディレイクで別れるのが普通なはずだ。

「(……………アテはある)」
〈おっ、たっのもしー。あれでしょ?力を借りるんでしょ?〉
「(そう)」
〈…………了解〉

リズの声が聞こえなくなり、再び目を開けたアリアの目に写っていたのは、心配するスレイの顔だった。




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