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「また起こっちゃいましたわね。一騒動」

アリアがしばらく宿で待っていると、スレイたちが駆け込むようにして帰ってきた。
バルトロ大臣に持ちかけられた、「自分達の配下に下る」という話を断ったら、衛兵に追われてしまったらしい。
そして、逃げようとするスレイたちに、キツネ男ーーールナールが所属していた暗殺ギルド、風の骨に、地下水路までの秘密の通路を教えてもらい、ここまで逃げてきたこともスレイは話してくれた。

「でも、よかった。これで、ここに思い残すことはない」
「そんな最期みたいに」

アリーシャの呟きに、ミクリオが反応する。
だが、アリアはその言葉に心当たりがあった。

「………マーリンドに、行くの?」

街を歩いていたとき、たまたま耳に入ってきた情報だ。
その時は、そんな馬鹿なと思い気にしていなかったが、今のアリーシャの言葉を聞いて、納得した。

「ああ。私はマーリンドに行きます」
「……って、疫病の街だろ!?あんな奴らに従うのか?」
「大臣たちの思惑はどうあれ、命令は正式なもの。何よりーーーマーリンドが疫病に苦しんでいるのは事実。私はできることをしたいんだ。ハイランドの民のために」
「アリーシャ……」

アリアの言葉にアリーシャが頷くと、ミクリオが立ち上がって信じられないとでも言うように叫んだ。
が、アリーシャの決意はその程度では揺らがない。
するとその時、スレイが立ち上がった。

「わかった。オレも一緒に行く」
「ダメだ。私に関わっては。さっきだって、巻き込んでしまった」
「でも、どうやってマーリンドへ?橋は流されちゃってるし」
「それは……なんとかする」

アリーシャは否定するが、スレイに痛いところを突かれ、黙ってしまう。

「だったら、一緒になんとかしよう」
「その方が早くなんとかなりますわね」
「どのみち橋は必要だしね、僕らにも」

全員の意見が一致し、一行は橋の様子を見に行くこととなった。

このとき、アリアに密かな不安が芽生えていたことも知らずに。




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