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レディレイクの地の主になってくれる天族を探しに、一行はあの後、南東にある川に向かった。
何やら人だかりが出来ていて、近くの衛兵によると、長雨による氾濫で、橋が崩壊してしまったらしい。
が、水の天族であるミクリオが側にいるスレイはすぐに、原因が長雨ではないことに気づいた。
「避難した方がいい」
「誰だ貴様は!」
衛兵は反論したが、周りの人たちは皆、スレイの言葉に同意する。
が、
「鎮められるものか……水神様の祟りを」
木に寄りかかっていた男性が、ボソリと呟く。
「恐ろしい影さ……一瞬で橋を叩き壊すほどのーーーなにかだ」
男性がそう言った瞬間、川にひとつの大きな竜巻が現れた。
よく見ると、竜巻の中心には大蛇のようなものがいて、一目でそれが憑魔だとわかる。
「アリア、下がって!」
いつの間にかライラとミクリオも出てきていて、スレイが武器を取り出すと、アリアに向かって叫んだ。
「拒否」
が、アリアはスレイの言うことを聞かず、自らも大鎌を取り出した。
「アリア!」
「あたしは、従士ではないし、陪神になれるはずもない。でも、あたしには憑魔が見えてる。浄化の力は使えないけど……足止め程度だったら、出来るはず」
そう言って詠唱を始めるアリアを見て、スレイは「わかった」とだけ言うと、憑魔へ向かって剣を振るう。
「この名を以ちて裁けー。リリジャス!」
……なんとも、緊張感のない詠唱だ。
この場にいる全員が思ったことだが、あえて無視しておいた。
「でも、危険になったらすぐに退くんだぞ!」
「Ja(ヤー)」
〈あれ、逃げなくていいの?アリア〉
戦っている最中、リズが頭の中に話しかけてきた。
〈いつもだったら、この辺でボクと変わってるのに〉
「(……変わらない)」
〈えー?なんでー?ボク、三下共を叩きのめすのって楽しいから、超大好きなんだけど〉
「(それでも、嫌)」
〈ふーん、ま、いいけどさ。ボクは、アリアの言うことだったらなんでも聞いてあげるんだから〉
〈その代わり、ピンチになったら変わってよね〉
「…ja」
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