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「ところでアリア。先程は、どうしてあのような状況に?」
レディレイクの街の外まで逃げてくると、アリーシャが尋ねてきた。
これは誤魔化しても無駄だと思い、ここまでの出来事について順を追って話す。
もちろん、研究所への報告の事については触れないが。
怒られることを覚悟して話したアリアだったが、返ってきたのは意外な言葉だった。
「まあ、怪我がなくてよかったよ。幸い、あまり大きな騒ぎにもなっていないようだしね」
「…え」
ミクリオの言葉に、アリアが目を丸くする。
ミクリオが一番、自分を怒るだろう。そう思っていた。
「ミクリオが怒らない。……意外」
「この程度で怒るほど、僕は短気じゃない。それに、予想外のハプニングは、スレイで慣れたからね」
ミクリオがそう言うと、スレイが苦笑いをする。
この二人の間には、よほど深い絆があることがわかった。
「…わかった」
アリアは顔を見られないように少しだけ進み、背中を見せる。
「ミクリオがツンデレだってことが」
「ツン……っ!?何だ、それは…」
笑いに、包まれた。
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