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「…あ、滝ってあれ?」

遺跡の最深部には、綺麗な水の貯まっている場所があった。
水はとても透明で、憑魔や穢れの事を知らない人間が見ても、一発で穢れていない、清らかな水だとわかるだろう。
早速、ミクリオの天響術で凍らせて持ち帰ることになった。
すると次の瞬間、スレイの持っていた"何か"が勢い良く光を発し、頭の中に映像が流れ込んできた。
自分が誰かになっていたりというわけではなく、流れ込んでくる映像に映る人物全てが背景のように見える、奇妙な錯覚に陥った。
まるで、動く絵本を読んでいる気分だ。

「(ボロい家……の中で、男の人が何かを書いてる。その隣には……赤子を抱えた女の人?男の人が立ち上がって、書いてたものが本になった。これは……)」
「ライラ、今のって」
「大地の記憶ですわ。やっと反応しましたね」

大地の記憶というのは、実際にあった出来事を映像のようにしてまとめたもの。
それを、瞳石という七色に光る石に宿すらしい。
そうなると、スレイが持っていたものは瞳石ということになる。

「見たか、ミクリオ?天遺見聞録を書いてた」

スレイが驚きを交えながら、ミクリオに言う。
アリアは見たことがなかったが、最後に映った本が、天遺見聞録だったのだろう。

「ああ。さっきの人が作者なんだ」
「大地の記憶は他にもあります。手に入れれば過去に関する知識を得られるはずですわ」
「なんか興奮してきた!」

スレイが走り出して、ガッツポーズをする。
何も知らない人から見れば、急に立ち止まって独り言を言ったかと思えば、いきなり走り出してガッツポーズをする奇妙な奴と思われるが、スレイはそんなことは気にしない。
第一ここには人が一人もいないし、この発見はスレイにとって本当に嬉しかったのだろう。

「やっとひとつ終わったんだ。そんなに気負うと体がもたないぞ」
「あぁ……」

ミクリオが呆れたように忠告をする。
が、スレイは先程とは違い、力のない返事で返した。
すると、

「スレイ!」「スレイさん!」「おいっ!」「わっ!」

そのまま倒れてしまった。
どうやら、ミクリオと契約した反動で、熱が出てしまったらしい。

「僕がおぶってくよ。スレイを冷やす用の氷もつくらないとね」





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