27
水属性の神衣を使えるようになったからか、戦闘は思ったよりも早く終わった。
アリーシャも天族が見えるようになったらしく、ちゃんと目線を会わせてアリーシャに礼を言われたせいか、ミクリオも少し照れてそっぽを向いていた。
「アリアも、ありがとう。駆けつけてくれて」
「いやいや、ボクは何もしてないしー?」
アリアの発言に、ミクリオ以外の全員が驚く。
別に、何かおかしい発言をしたというわけではない。
アリアの口調がいつもと違うことに気づいたのだ。
「アリア……?」
「何だか、いつもと口調が……」
「あ、そっか、まだ紹介してなかったっけ。はじめまして!ボクは"アリアの影"!名前はないよ。アリアの、もうひとつの人格って感じかな?」
困惑する皆に対してこう言ってしまったため、皆がさらに困惑する。
呆れたミクリオが内容を要約して話すと、皆はすぐに納得してくれた。
「……でも、"アリアの影"って、呼びづらいし、長くない?それに、名前がないなんてかわいそうだし」
スレイの突然の発言だったが、全員が頷く。
確かに、戦闘中に"アリアの影"などと呼んでいては、とてもめんどくさいことになる。
「じゃあ、導師が決めてよ。ボクの名前」
「え、オレ?」
「言い出しっぺはキミだろ?」
アリアに痛いところを突かれ、仕方なくスレイが考える。
しばらくすると、スレイが口を開いた。
「ーーーリズ。リズ、なんてどうかな?」
「古代語で"進化"という意味ですわね。ピッタリだと思いますわ」
他の皆も、それに賛同する。
「…リズ……リズ、かぁ…。うん、気に入った。キミは以外と面白い人だったんだな、導師」
「はは……できれば、導師じゃなくて、スレイって呼んでほしいんだけど」
リズが輝いた目でスレイを見つめる。
嬉しいような、少し照れくさいような、様々な感情が、混ざり合っていた。
スレイはそれに、苦笑いで返す。
「さて、名前も決まったことだし、そろそろ進まないか?」
話に一区切りついたところで、ミクリオが切り出す。
皆がそれに賛同すると、ライラとミクリオはスレイの内へと入っていった。
△ | ▽