17


「そしてここに居るのがライラ。みんなが湖の乙女って呼んでる人」

スレイがライラの事を紹介すると、ライラはアリーシャに一礼した。
見えてはいないが。

「……君は本当に導師になるべくしてなったのだな」

アリーシャが呟く。

「それに引き替え私は……我々はこれほど身近に天族の方々が居てもどうすることもできない」
「それは違いますわ」
「聞こえてないって」

アリーシャの言葉にライラが反論する。
が、ミクリオにそう言われ、ライラはスレイに、アリーシャの手を握るよう頼んだ。

「あー、あー、聞こえますかー?」

ライラがそう言うが、反応はない。
聞こえていないらしい。
今度は、スレイに目を閉じるよう頼んだ。

「あー、アリーシャさん、聞こえますかー?」

反応はない。
やはり、聞こえていないらしい。
すると今度は、息も止めるよう頼んだ。
ライラは両手でスレイの耳を塞ぐ。

「アリーシャさん」
「聞こえる!女性の声が!」

今度は聞こえたようで、アリーシャは辺りをキョロキョロと見渡していた。

「アリーシャさん。私たち天族はあなたたちの心を見ています。万物への感謝の気持ちを忘れないでください。
私たちは感謝には恩恵で応えます。けして天族を蔑ろにしないでください。その心が穢れを生み、災厄を生むのです」

ライラはそう言うとミクリオを見た。
今度はミクリオが話す番ということだろう。

「大丈夫さ、アリーシャ。君の感謝の気持ちはちゃんと届いて……」

が、ミクリオはそこまでしか話せなかった。
息を止めていたスレイに、限界が来てしまったからだ。

「スレイ!もう一度!」
「えー……何かもっといい方法ない?」
「今のスレイさんではこれしかなさそうですわ」

どうやらこれは、導師の力を利用したもので、スレイがもう少し導師としての力を身につければ、ここまで知覚遮断する必要はなくなるらしい。
するとその時、

〈あはは、面白い力だね〉

そんな声が、確かにアリアには聞こえた。
他のみんなには聞こえていないらしい。

〈そんな能力があったら、ボクの声もみんなに聞こえちゃうかなー?〉
「(…お前か、"影")」

アリアは目を閉じ、頭のなかにいる"影"に話しかけた。

〈もう少しでボクもアリアに話しかけられなくなっちゃうよ。寂しいなー〉
「おーい、何してるんだー?アリアー?」

スレイにそう言われ、アリアはハッとする。
気づけば、スレイたちは邸宅の入り口付近に立っていた。

「どこか、具合でも悪いのか?」

ミクリオにそう聞かれるが、アリアは問題ないと言って、スレイの後を追った。




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