12
「……やっと、ですか」
スレイが、剣を抜いた。
スレイが、導師になった。
「いいよ、アリア。もう敵はいない。全部、導師が何とかしてくれた。アリアが怖がるものはないよ」
そう言って目を閉じ、次に開けたときには、アリアの瞳の色はもとの薄紫色に戻っていた。
見てみると、スレイはもうすでに全ての憑魔を浄化し終わった後だ。
「スレイ……本当に………」
「うん。オレ、導師になったよ」
「おつかれ」
スレイが一人の男性を支えながら言うと、アリアがスレイに話しかける。
「あ、アリア。怪我はない?」
瞳の色が変わったことに気づいていないのか、それともわざと触れないようにしているのかはわからない。
スレイは、アリアの瞳の色について、尋ねることはなかった。
「グッジョブ」
「まったく君は……一体どうなっているんだ」
アリアがスレイの問いに適当に答えると、ミクリオも呆れた様子で話しかけてきた。
するとその時、
「静まれ!静まれい!」
一人の男性が、衛兵たちを連れてやってきた。
「バルトロ大臣……」
「アリーシャ殿下。暴動が起きたと報告がありましたが……」
「ええ。ですがもう収束しました。導師の出現によって」
バルトロ大臣と呼ばれた人物がそう言うと、アリーシャが答える。
このタイミングからして、今回の暴動を企てたのも、この男だろう。
「なんですと……。レディレイクの人々よ。此度の聖剣祭はこれにて幕とする。殿下。後日顛末を伺いたい。マルトラン卿もよろしいか。
……導師だと?チッ」
バルトロ大臣が、帰る際にボソッと呟いた。
アリーシャたちに聞こえているのかはわからない。
だが、この距離でアリアに聞こえているということは、アリーシャやスレイにも、きっと聞こえただろう。
「それではスレイさん。私はあなたの内に戻りますね」
バルトロ大臣が帰ったあと、ライラがそう言った。
するとライラは光に包まれ、次の瞬間、吸い込まれるようにスレイの体の内へと入っていった。
が、すぐにスレイは倒れ込み、ミクリオとアリアが急いで駆けつける。
どうやら、ライラがスレイの体に入ったせいらしい。
「やば……もうダメ」
「スレイ!?大丈夫なのか?」
アリーシャもスレイのとなりに駆けつける。
「大丈夫くない……ちょっと三日ぐらい寝込むね……」
スレイはそう言うと、アリーシャの膝に頭をのせて寝てしまった。
いわゆる、膝枕というやつだ。
その突然の出来事にアリーシャは慌て、民衆も騒ぎだした。
「おおっ、スレイってば大胆」
「そんなことを言っている場合か!」
アリアがそう言うと、ミクリオにツッコまれてしまった。当然だが。
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