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「浄化の力は私が振るうのではなく、この剣を引き抜き、私の剣となった者が操る力なのです……」
「それなら……!」
スレイがそう言って、剣の台座に近づく。
剣を引き抜こうとしたその時、
「お待ちください!」
湖の乙女によって、それは阻まれた。
「私の剣となるということは私を宿す『器』となり、宿命を背負うということ。
浄化の力を操り、超人的な力を得る代償に人に疎まれ、心を打ちのめされる事もあるでしょう。
憑魔から人や天族を救うため苦渋の決断を迫られることも……それは想像を越えた孤独な戦いです」
湖の乙女がそこまで言うと、スレイが黙る。
するとその時、スレイに向かって一匹の憑魔が飛びかかってきた。
「スレイ!」
スレイが避けようと身構えたその時、
「ライトニングブラスター!」
そう叫ぶ声が聞こえるのと同時に、一発の電撃が憑魔を直撃した。
憑魔はそのまま、床へと倒れ込む。
電撃が放たれた方を見てみるとそこには、
「……アリア!?」
手を前にかざした状態のまま立っている、アリアの姿があった。
だが、いつものアリアとは少し違う。
眠たそうにしていた瞳が狂気で満ち溢れ、何より赤く光っていた。
「決断までの時間稼ぎなら任せて。キミはキミでなんとかやっちゃってよ」
アリアはそう言うと、また別の方向に電撃を放つ。
「こっちは暴れられなくて今ちょっとイライラしてんですよ!せめて暇潰し程度にはなってくださいよね!」
スレイたちに構わず、電撃を放ち続ける。
電撃は人々の間をすり抜け、憑魔へと当たっていった。
「あれは天響術……!?なぜ人間の彼女が………」
湖の乙女が驚いて、アリアに注目する。
するとその時、
「君の名前を聞いてもいいかな」
そう、スレイに尋ねられる。
「あ、はい。ライラです」
「ライラ……オレ、世界中の遺跡を探検したいんだ。
古代の歴史には、人と天族が幸せに暮らす知識が眠ってるって信じてるから。
オレの夢は、伝説の時代みたいに人と天族が幸せに暮らす方法を見つけること。
憑魔を浄化することで人と天族が救えるならそれは、
オレの追いかけてる夢と繋がってるんじゃないかって思う。
だからライラ、オレは『導師』になる」
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