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だが、人々から上がってきたのは、怒りや不満などの声だった。
長年溜め込んでいたものが爆発したのだろう。

「黙れ!祭りの邪魔をするな!」
「やめないか!」

アリーシャの言葉に衛兵が一瞬動きを止める。
が、その時民衆から小石を投げられ、カンという音を響かせて衛兵の鎧に当たった。

「貴様!」

その事に腹を立てた衛兵が、民衆に向かって槍を振るう。
幸い、誰にも当たらなかったらしい。
人々が逃げるなか、衛兵も一緒に外に出ていたことから、最初から誰かの命令で動いていたことがわかる。

「仕組まれたんだ……この暴動は!」
「ほんと人間ってめんどくさい」
「あの衛兵!」

その時、アリーシャに殴りかかろうとした男性の前に、スレイが立ちふさがった。

「いけません!敵意に身を任せては!」

湖の乙女が立ち上がって叫ぶ。
が、天族であるがため、その叫びは誰にも聞こえない。
聞こえるのは、アリアとスレイ、同じく天族であるミクリオだけだろう。

「憑魔が……生まれてしまう!」

湖の乙女がそう叫んだとき、一人の男性から黒い霧が現れ、突然人狼の姿になってしまった。
他の人々も同じく、人ではない憑魔になってきている。

「湖の乙女!なんとかできないのか!?」

スレイが湖の乙女に訴える。
民衆はパニック状態であるため、そんなこと気にしない。

「天族?それにあなたは私が……?」

するとその時、人狼がスレイたちに飛びかかってきた。
スレイたちはなんとかかわすが、人狼はそのままアリーシャがつけた浄化の炎のなかに飛び込んでしまう。
炎は飛び散り、近くに燃え移ってしまった。

「ミクリオ、火を消してくれ!」
「あの黒い炎は憑魔と言っていい!僕になんとかできるのは普通の炎だけだぞ」

そんなことを話している間にも、憑魔は生まれていく。

「はあ……これは、ホントのホントに大変ですね……」

そんななかアリアは、逃げ惑う人々を見て笑っていた。

「…めんどくさ。ほら、さっさと出てきてくださいよ。どーせ今回も出てくる気なんでしょ。器がピンチですよ、影」









ーーーーわかったよ、アリア。

ーーーーーボクはキミのためなら

ーーーーーどんなことだってできるんだ。




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