09


「その怪しい一団の言うことは事実だ。私の事を快く思わない者たちは多い」

あのあと、スレイたちは場所を変えて事情を説明した。
が、主に話しているのはスレイで、#アリアはどこか居心地悪そうに壁に寄りかかってスレイの様子を見ている。
横にはミクリオもいて、アリアの顔色が悪いせいなのか、時々心配をして具合を聞いていた。

「もうすぐ聖剣祭最後の祭事、『浄炎入灯』が始まる。最後まで見ていってくれ」

アリーシャはそう言うと、マルトラン卿と共に行ってしまった。

「あれが為政者の覚悟か……」
「人間ってホントめんどくさ。嫌なら嫌って言えばいいのに」
ミクリオとアリアが、スレイに近づきながら言う。
すると、ミクリオが思い出したように言った。

「そうだ!スレイ。剣の台座を見てくれ!」

ミクリオにそう言われたスレイは急いで祭壇へと向かい、アリアもそれについていく。
祭壇が見える位置についたスレイ、アリアの目に飛び込んできたのは、階段に寝っ転がって寝ている、一人の女性の姿だった。
近くを通る人々がみんな注目していないことから、恐らく天族だろう。

「彼女と話せなきゃ、剣は抜けないんだろう。普通の人じゃダメなわけだ」
「ああ、あれが湖の乙女ってやつ」
「すっげえ!伝承は本当だったんだ!ミクリオ!声かけてみてよ!」
「僕が!?」
「あたしやスレイじゃ、変な目で見られるのがオチ。普通の人には見えない、天族ならではの特権でしょ」
「しかしだな……」

ミクリオが行くのを躊躇していると、祭壇にアリーシャとマルトラン卿が立った。
みんながそれに注目する。

「人々よ。レディレイクの人々よ。この数年、皆が楽しみにしていた聖剣際も世相を鑑みて慎んできた。
だが今年はアリーシャ姫のご理解と全面的な協力により開催する運びとなった」
「最近は異常気象や疫病、不作や隣国との政情不安など憂事も多い。
だが、こんな時代だからこそ伝統ある祭事をおろそかにしてはいけないと私は考える」

マルトラン卿とアリーシャのスピーチに、民衆が拍手を送る。

「さあ、湖の乙女よ。我らの憂い、罪をその猛き炎で浄化したまえ」

あアリーシャがそう言って燭台の中に何かを入れると、炎はさらに激しく燃えた。

「レディレイクの人々よ!この祭りを私たちの平和と繁栄の祈りとしよう!」

アリーシャの言葉に、人々からは拍手が起こる。
誰もが、このまま聖剣祭は無事終わると思っていた。

「祈りがなんだってんだ!」

このときまでは。




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