小説 | ナノ




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大手アパレル・コスメブランドを擁するV&G本社の一角にあるグループ傘下のホテルの広いパーティーホールには、各界の著名人が多数見受けられ、皆多種多様、煌びやかに着飾っていた。

誰しもが楽しげに会話をする中、ザンザスはワイングラスを片手に、一人つまらなそうな表情で壁に寄り添っていた。



「やぁ、ザンザス!…珍しいじゃないか」


人混みを掻き分けるように、やってきた青年がちゃっかりと隣に陣取る。
ハニーゴールドの髪がシャンデリアの光を乱反射させるかのように眩しく、そして放って置いても一人で喋り続けるのでできればこの男に気付かれたくはなかった。

目立つ外見のこの男が近付いてくるだけで、2人は既に広い会場の注目を集めていた。


「…部下はいいのか、ディーノ」

ザンザスの視線の先には、オロオロとする、人混みの中でディーノに置き去られた部下たちがいた。

「大丈夫だよ。…それより、久しぶりに会った幼なじみに挨拶もないとか酷くない?」


「うるさいのは嫌いだ」


「ふぅん?じゃあなんで今日は来たの?絶対来ないと思ってたからみんながお前に挨拶しようと様子を伺ってるよ?」


そんなことは知っている、と色めき立つ周りを一瞥するとディーノにチラリと視線を移した。


「お前には教えない」

「ケチっ」



頬を膨らますディーノを尻目に、持っていたグラスの中身を一気に煽る。
ちょうどその時、ざわつく場内の様子が何やら少し変わった。

(なんだ?)

「あ、もしかして主催者様が到着かな?…なぁ、知ってるか?今日は社長自らブランドの新展開の発表があるらしいぜ」


「…」

(そんな話は聞いてないが…まぁ俺には関係ない…)



興味なさげに再び壁にもたれようとしたザンザスの視界に、一瞬見覚えのある銀色が映った。
(何か…今)



そんなことあるわけがない、と思いつつも無意識に壁から背を離し、ホールの中央へと向かう。

「あっ、おいっザンザス!?」

それまで何にも興味なさげだったザンザスの突然の行動に、ディーノが慌てて追いかけた。


ズンズンと掻き分けるように人混みを進む。

(何をしてるんだ、俺は)






ついに人混みの先頭に踊り出たザンザスは、目を見開いたまま目の前の全体的に白っぽい女を見つめて立ち尽くすしかなかった。




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