小説 | ナノ




22



助手席に座ったスクアーロは車を走らせるセコンドの整った横顔を遠慮がちに見つめた。

「セコンドさんは、俺をどうしたいんだぁ?」


「ん?…まぁ、今日は単純に連れ回したいだけだよ」


目線を一瞬だけスクアーロに寄越すと、楽しそうに口角をあげた。

(あぁ、やっぱ似てるよなぁ)

どうにも目の前の男は彼にダブって見えてしまう。顔立ち、背格好、心地よい低い声。
何より纏った雰囲気がザンザスにそっくりなのだ。

(性格は…似てるような似てないような……。)


ザンザスともあまり親しいわけでもないし、はっきり言って表面的なことしか知らないが。


意識するとなんとなく居心地悪くなったので、窓の外を見ていると時計が目に入った。時刻は既に午後1時を回っている。


「なぁ、アンタ腹空かねぇ?」

「いや、大丈夫。あぁ…すまない、気付かなかった」


「あっ…違う、俺は大丈夫だけどっ…」


思ったことと違う意味にとられて慌てて否定しようとした。ねだっているように思われるのは嫌だ。


「着いたら食事はあるから、少し我慢してくれ」


「…う゛…はい…。」


わかってる、と言わんばかりのセコンドにスクアーロはつい押し黙ってしまった。


「……………」


今日セコンドに会ってから今までで気付いたことがある。

(この人……超絶マイペースだぁ…!!)


今まで数度、店で会った時には見られなかった一面に少し驚く。もっとキッチリ几帳面なタイプだと思っていた。

(人ってわかんねぇのなぁ。)


ただの客なのだから深く知ろうとは思わない。しかしセコンドは謎が多すぎてどうしても気になってしまう。



「アンタって変な人だなぁ。」

「そうか?私はキミのほうが不思議で面白いんだが。」




間を置いて二人同時に吹き出した。


「あははっ、やっぱアンタ変だっ」


「ふふっ、そういう所もキミは私の知り合いによく似ているよ」


「…知り合い?俺に似てるなんて残念な人だなぁ」


「そうだな…」


「あっ、肯定すんのかぁ」



わっと話が盛り上がるさなか、ようやく目的地に着いた車はビルの地下駐車場へと入った。





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