小説 | ナノ




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「…スクアーロ…?」


いやに綺麗に着飾られた目の前の真っ白い印象の女は、この世に3人似た人間が存在するとは言うが纏う雰囲気もその特徴的なキツい三白眼も、紛れもなくザンザスのよく知るスクアーロだった。
しかし次に紡ぐ言葉が出ない。


一方スクアーロも目を見開いて突然の、思いがけない場所でのザンザスとの遭遇に声も出せずに固まってしまっていた。


「…」


ざわめきと人混みの中、2人の世界でフリーズしてしまった人目を惹く男女に周囲の注目が集まる。
「ザンザス様よ」
「あの女性は誰?」
「ザンザス様がいらっしゃるなんて珍しい」
「あの子は新しいモデルさんかしら」
「綺麗な子ねぇ」




固まったままの2人と周囲の反応を満足気に見渡して、セコンドがスクアーロの肩を引き寄せた。


「皆さん、彼女は慣れない場所で緊張しているようですので通していただけますか。また後程ご挨拶いたします」


セコンドがよく通る声で周囲にそう言うと、どこからともなく人垣は解散して、戸惑うザンザスを置き去りにした。


「…後で、な。」


セコンドは、ザンザスによく似たその端正な凛々しい顔を意地悪く歪め、呆然と立ち尽くしたスクアーロの肩を抱いて会場の奥へと消えて行った。




「ザンザスっ」


フラフラと、ようやくザンザスに追いついたディーノが声をかけると、まるで金縛りにあったかのように固まっていたザンザスがビクッと肩を揺らした。あからさまに動揺を晒すなんて彼らしくはない。


「…大丈夫か?彼女は知り合い?すっげー迫力のある美人だったな。」


ディーノが、セコンド達の消えて行った方を見た。途端にザンザスの眉間には深い皺が刻まれた。


(アイツ…なんで…)





パタン、と扉の閉まる音で我に返ったスクアーロは、先程のザンザスとの遭遇を反芻する。
意識がどこかへ旅立ってしまっていたようで、いつの間にかパーティー会場とは別の部屋に通され、ソファに座らされていた。


(…ザンザス…だったよな。なんで?!ってか俺の名前呼んでたのに、なんにも言えなかったよな…)


「すまない、突然こんなところに連れてきて驚かせたな」


セコンドが湯気立つティーカップを差し出した。戸惑いながら受け取ると、ほんのりオレンジと優しく上品な紅茶の香りがした。





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