小説 | ナノ




21



自分は一体何をしているのか。

スクアーロは華奢な脚の椅子に座り、鏡の中を見つめながら呆然としていた。




セコンドの車に乗せられて数分、着いた場所はいかにも高級ホテルだった。

(ホテル…???)

「あの…用事って…?」


「うん、今日はちょっと君にやってほしいことがあるんだ。…その準備を、ね。」


「え…」




それから1時間は経っただろうか。


「なんでこんなことになったんだぁ…?」


セコンドは、スクアーロを車から降ろしロビーに待機していたスタッフに預けると「後で迎えに来るよ」と言い残しどこかへ行ってしまった。

わけもわからないままスクアーロはホテルのサロンに通され、バスローブ1枚にされるとエステやらなにやら施され気付けば髪も好き放題いじられていた。

栄養不足で荒れ気味だった髪は綺麗にパックされゆるくウェーブがかけられた髪に煌めくネイル。思えばネイルなんて生まれて初めてかもしれない。


「スクアーロ様、セコンド様よりお召し物をご用意頂いてますのであちらへどうぞ」


「服もっ!?…一体あの人なんなんだぁ?こんな高そうな所っ…」

「ふふっ、心配はいりませんよ。すべてセコンド様がお支払い済みです。」


柔和な笑みを浮かべた女性スタッフはテキパキとスクアーロをフィッティングルームへと押し込む。


「さぁ、あまりお時間がございませんのでお着替えになってください。」


セコンドの目的が全く見えない。

(そもそもどこがデートなんだぁ?)



フィッティングルームには水色のストライプのスーツがかけてあり、どこでサイズを知ったのかと驚く程体にフィットした。
「…ますますわかんねぇよ…」

フィッティングルームを出ると、待ち構えていたスタッフによって仕上げを施され、ロビーへ案内されるとエントランスに随分待たせていたのか車にもたれかかったセコンドがいた。
スクアーロに気が付くと、彼は車から背を離し、助手席のドアを開けた。



「うん、君の着てきた服も悪くは無いがそっちのほうが断然似合ってるな。」


「あ…ありがとうございます」


スクアーロをシートに座らせ、満足げに頷くとドアを閉めた。





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