小説 | ナノ




14



「ん…」


(なんだぁ?…何だか柔らかいフカフカした感じと暖かい感じ…気持ち良い…)


スクアーロは感じたことのない珍しい感触に意識を覚ましながらもぞもぞと寝返りを打ち、重たい瞼を上げた。


目の前には漆黒。この、どこかであったような既視感。
思わず叫びそうになるが、息を吸い込んだ時、ヒュッと鳴った喉に目の前の黒髪が微かに動いたのを見て抑えた。


(これは…またどうしたんだっけか)


キョロッと辺りを見回すと、自分の部屋らしい。しかし自分の部屋には大人2人が横になれるベッドもフカフカの布団も無いはずだ。
そして、なぜこの黒髪…ザンザスは自分と一緒に眠っているのか。

「っ!」


思わずスクアーロは起き上がり自らの衣服を確認する。
(よし、着てる。…良かったぁ…。)


安堵の溜め息を吐くと、沈んだ枕の方からクククッと笑い声が聞こえた。


「安心しろ、テメェに盛ったりしねぇよ」


いつの間にか開かれていた赤い目が意地悪く歪んでいた。


「あっ…違っ…わないけど!んなこと分かってるよ。」


スクアーロの白い肌が耳まで真っ赤に染まり、思わず両手で隠す。


「気分はどうだ?栄養失調と風邪らしいが、お前玄関で倒れてたぞ」


ザンザスがそう言いながらスクアーロの長い銀髪の毛先を掬った。


「わざわざ来てくれたのか?」

「昨日お前は無断欠勤だったがルッスとベルがお前が電話に出ないと喧しくてな。…まさか丸1日あそこに倒れていたのか?」

「すまねぇ…ありがとうなぁ」

(でも普通、そんなことで来てくれるもんかぁ?)


「逃げられても困るからな。早く治してしっかり働け、ドカス」


そう言って心なしかザンザスが微笑んだ気がした。







「そういえば、これは…」


ザンザスが帰るというので、見送ろうとしたスクアーロは手をついた自分真下の物に目をやった。

「あ゛?…やる。」


「そうじゃなくて…っ」


「なんだ?」


「いや…いい…」


(こんなでかいベッド…どうしたんだぁ…?)


どうもザンザスには言いたいことが伝わりそうにないので言い淀む。
そもそもなぜ一緒に寝ていたのか。聞いてもいいのか悩んだが、なんとなく聞けないままザンザスを見送った。





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