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大抵、本部からザンザスへの用事には幹部内でも社交的なルッスーリアか副官であるスクアーロを通して伝えられる。なのでスクアーロの携帯にボンゴレからの着信があっても何も不思議はない。
しかし、問題は相手だった。



『やぁ。日本は楽しいかい?』

少しくぐもった老人のその声は間違いなく9代目のものだった。


「なっ……!」


思わず叫びそうになったが、今スクアーロがいるのは景観の良い閑静な老舗高級旅館である。ただでさえ目立つ外国人が叫んで騒ぎを起こすのは非常にマズい。しかも隣の部屋にはザンザスがいる。



「…なんの用だぁ?直々に電話なんて」


『おや、随分と嫌われてるね。今日、私はシルヴィアに会いに行ったよ』


「あぁ、月1回の。…それがなんだぁ?」


穏やかに話す老人の意図がつかめない。遠い地にいる娘の話を持ち出して、一体なんだというのか。額がキーンと突っ張って嫌な汗が出てきそうだ。


『シルヴィアは、良い子だ』


「……あぁ。…」


脳裏にはシルヴィアが浮かび微笑んでいた。


『わがまま、それですらないことも口に出せない。』


「?」


『シルヴィアは君達と暮らしたがっているよ』


「っ……。」


『おそらく君はまだザンザスに子供のことを話していないだろう?だから』


「余計なお世話だっ」


つい叫んでしまった。勢いで通話も切ってしまい、情けなくてその場に座り込む。


「ぁ゛ー…やっちまったぁ」


組織のドンにキレて電話ブチ切るなんて話にならないほど馬鹿みたいだ。


(シルヴィア……)


情けなさと悔しさで、ギュッと握った手の中の携帯電話が熱くなるまでずっとしゃがみこんでいた。





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