小説 | ナノ




19




「お祖父さんは、パパンのパパンなのよね?」

「ああ。そうだよ」


「似ているの?」


「いや、似ていないね」



シルヴィアには月に一度、他の子供たちとは違って施設に祖父が訪ねてくる。先生たちに挨拶をし、子供たちに持参した菓子を配るとシルヴィアと2人で話をする。


長い間ここで過ごして分かったことは、祖父は大変な権力者であること。
そして、シルヴィアが母親と暮らせないのと父親に会えないのには祖父が関わっているということ。


以前、「お祖父さんは、悪い人なの?」と聞くと、困ったように微笑むだけだった。悪い人には見えない。しかし、まるっきり良い人というわけでもないのだろう。
全くの良い人は権力者にはなれない。と本でも読んだし、何より彼にはたくさんの護衛がついてくるのだ。




今までお互いになんとなくその話を極力避けてきていたのだが…。



「シルヴィア、両親と共に暮らしたいかね?」




切り出したのは祖父だった。


「…もちろん」




シルヴィアの表情は重く固まったまま、口だけがパクパクと動いていた。
祖父はにこやかに言っているのに、なぜか物凄く威圧感がある。ああ、やっぱり善人ではない。


「…でも、…私の存在が両親の邪魔になるなら私はずっとここにいます…。」


ぽつりと呟いたシルヴィアは俯いた。







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