小説 | ナノ




10


翌日、正午からヴァリアーの面々が病室に集まっていた。

「シシッ、マーモンよりちっちぇ〜の。」
「当たり前だよ。」
「ふおぉっ、ボスにあまり似てないではないか!」

ベビーベッドで眠る小さな赤ん坊を取り囲んだ面々が口々に喋り部屋の中は喧しかった。


「わーるかったな、似てなくて!俺もビックリだぁ。」

つい声を張り上げそうになったスクアーロだが、まだ産後の疲労もあり普段ほどには声量がない。失言に感じたのか、レヴィはそれ以上容姿については言わなかった。


「名前は決めたのかしら?」

ルッスーリアが人数分の紅茶を入れて、先にスクアーロに手渡した。

「まだだぁ。俺そういうの苦手で…、お前らにも考えて欲しいんだけど」

受け取ったカップを手の中で揺らしながらスクアーロがそう言うと、

「あら、じゃあ可愛い名前がいいわぁ」
「ボスのように凛々しい名前がいい」
「王女みたいなのがいい」
「僕はパス」

また一斉に喧しくなった。


「バラバラじゃねぇか。」


ふう、とため息をつくとベルフェゴールが手をあげた。


「ねえ、先輩!王子がつけたい。」

「う゛お?いいけど」

「ぬ…貴様、名前というのは大事なんだぞ。字面や画数に意味や家計など…」
「はいはい、堅苦しいレヴィはほっといていいわよん。」


大人を無視してベルが手を開いたり握ったりしながらブツブツと呟き考え始めた。

「プラチナ、シルバー、ゴールド、ルビィ、エメラルド、…」
「あら、宝石の名前になるのかしら。」

時折チラチラと赤ん坊とスクアーロを見ながらイメージに合ったものを探しているようだ。
すっかり皆のカップの中の紅茶が無くなる頃にベルが立ち上がった。


「シルヴィア!!どう?」

前髪で目元が見えないが、ニッと満面の笑みを放つ。一瞬置いて皆一斉に同じセリフを放った。


「「それが良い」」


まとまりのなかった大人達にも納得がいく名が出てきてあっさりと決まった。


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