小説 | ナノ








爽やかな風が吹く初夏、スクアーロは出産した。
悪阻もほぼ無く、妊娠していても働こうとした彼女をヴァリアーの面々はモチロン、9代目も「危ないからやめなさい」と窘めたが、なかなか譲らず本当にギリギリになるまで仕事をしつづけていた。



「…んもうっ!ホントビックリしたんだからね。いくらアタシでも妊娠経験なんて無いからアンタの状態なんてわかんないのよ?!」



「マジ悪ぃ…、ありがとなぁ」

スクアーロが産気づいたのは幸いにも訓練中で、側にいたルッスが大慌てで抱きかかえてボンゴレの病院に連れて行った。


「…反省しなさいよ。」
「おぅ。」


若年での初産であったが、日頃の筋力トレーニングのおかげか意外とアッサリと出産。小さくて真っ白な女児が生まれた。


「ホント天使ちゃんだわ〜。外見はスクちゃんそっくりねぇ。可愛いわぁ〜」

「そうだなぁ…。あんまザンザスに似てねぇ」


「スクちゃん…」


赤ん坊を抱きかかえたスクアーロの細い肩が一瞬震えた気がした。


「また明日来るわ。今日は疲れたでしょう?よく休みなさいね。」


ルッスはそういうと部屋を出て行くと、おそらく9代目が用意した護衛と話す声が聞こえる。
ヴァリアー内で護衛を用意したかったのだが、最近ボス派でない他者を推す輩がいるようで常に幹部がつく訳にもいかずボンゴレから見繕われた。




腕の中ですやすやと眠る、生まれたばかりの我が子を覗き込んだ。


「…ザンザス、お前は喜んでくれるかぁ?」


(アイツ子供なんていらないっていいそうだなぁ…)





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