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読唇術が使えたところでこの吹雪では口元まで見やることもできない。無駄なあがきは早々に切り上げた。

あの3人がこのまま吹雪の中を進んでいくとは思えない。先ほどまで自分と対峙していたトートのことだ、口八丁で敵軍を丸め込んで此処(ここ)に戻ってくるだろう。ともするといらいらが募る。面倒が増えるのはこの上なく嫌だった。ましてアレは厄介だ。




どうする、ハードワンよ



ハードワンがいる3階の操縦室からは3人の姿が良く見えた。雪がこれでもかと張り付いた窓から外を覗きながら、自問する。

迎え撃つ他はない
兵隊とはいえ女2人を含んでいる。しかも1人は和解したばかりの敵軍だ。即席の和解などすぐに分断してしまえば三竦みには持ち込めるかもしれない。ストロベリー軍はどちらの国とも蜜月という訳ではないはずだから。


万が一にも形勢が変わらないなら、殲滅するだけのこと。


1階はまだモヤが掛かっている。
先ほどトートが出した植物が燻られて煙が立ちこめ、視界が悪い。この状況を使う手はないだろう。




ーーーーーーーやるしかないのだ




「狩るしかないな・・・・・・」



 窓の外で3つの陰が動き出す。それを合図にハードワンも壁から背を離し、運び込んだ荷物に手を掛けた。手に取れるだけの装備を体中に仕込みながら廊下に出る。モヤが掛かった吹き抜けの1階を見下ろし、左手に持った球体を撫でた。

まるで、水面を覗き池の底から沸き出す魚を待つようだ。
扉が開くのを待ちながら、柱の陰に身を潜める。










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